日本人の3分の1は日本語が読めない? 週刊プレイボーイ連載(368)


先進国の学習到達度調査PISA(ピサ)はその順位が大きく報じられることもあってよく知られていますが、PIAAC(ピアック)はその大人版で、16歳から65歳の成人を対象として、仕事に必要な読解力、数的思考能力、ITを活用した問題解決能力を測定したものです。24カ国・地域において約15万7000人を対象に実施され、日本では「国際成人力調査」として2016年にその概要がまとめられています。

ヨーロッパでは若者を中心に高い失業率が問題になっていますが、その一方で経営者からは、「どれだけ募集しても必要なスキルをもつ人材が見つからない」との声が寄せられていました。プログラマーを募集したのに、初歩的なプログラミングの知識すらない志望者しかいなかったら採用のしようがありません。そこで、失業の背景には仕事とスキルのミスマッチがあるのではないかということになり、実際に調べてみたのです。

このテストは日本でも行なわれていて、その結果をまとめると以下のようになります。

  1. 日本人のおよそ3分の1は日本語が読めない。
  2.  日本人の3分の1以上が小学校3~4年生の数的思考力しかない。
  3. パソコンを使った基本的な仕事ができる日本人は1割以下しかいない。
  4. 65歳以下の日本の労働力人口のうち、3人に1人がそもそもパソコンを使えない。

「そんなバカな!」と思うでしょうが、これはAI(人工知能)に東大の入学試験を受けさせる「東ロボくん」で知られる新井紀子氏が、全国2万5000人の中高生の「基礎的読解力」を調査し、3人に1人がかんたんな問題文が読めないと指摘したことと整合的です(『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』)。これを疑わしいと感じるのは、あなたが知能が高いひとたちの集団のなかで生活しているからにすぎません。

さらに驚くのは、日本人の成績がこんなに悪いにもかかわらず、先進国のなかでほぼすべての分野で1位であることです。だったら他の国はどうなっているのかというと、平均は次のようになります。

  1. 先進国の成人の約半分(48.8%)はかんたんな文章が読めない。
  2. 先進国の成人の半分以上(52%)は小学校3~4年生の数的思考力しかない。
  3. 先進国の成人のうち、パソコンを使った基本的な仕事ができるのは20人に1人(5.8%)しかいない。

ヨーロッパの国を見ると、PIAACの結果は南が低く北に行くほど高くなります。ユーロ危機のときにPIGS(ポルトガル、イタリア、ギリシア、スペイン)と呼ばれ、財政が悪化し失業率が高く、右派や左派のポピュリズムに翻弄される「南」に対して、北欧など得点の高い国は、排外主義的な政党が勢力を伸ばしてはいるものの失業率は低く社会は安定しています。

「仕事に必要な問題解決能力(≒知能)」は個人によってばらつきがあると同時に、国によって大きく異なります。これが、私たちが直面している「事実(ファクト)」です。それをどう理解すればいいかを、新刊『もっと言ってはいけない』(新潮新書)で書きました。さまざまなご意見があるでしょうが、ご批判もふくめ、みなさまの評価を聞かせていただければ幸いです。

『週刊プレイボーイ』2019年1月21日発売号 禁・無断転載

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8件のコメント

  1. >先進国の成人の約半分(48.8%)はかんたんな文章が読めない。
    >先進国の成人の半分以上(52%)は小学校3~4年生の数的思考力しかない。
    >先進国の成人のうち、パソコンを使った基本的な仕事ができるのは20人に1人(5.8%)しかいない。

    ブルーカラー的な実学的な能力と
    ホワイトカラー的な能力が違うだけの話ですよ。

    衣食住に直接係る実学的な能力な能力は、
    文章操作、数理操作という抽象的な能力とベクトルが違うため、

    高学歴でも生活力がなかったり、
    低学歴でもバリバリ働く人もいますね。

    どちらが良い悪いではなく、単にベクトルが違うだけの話。

  2. 確かに人間の優劣とは無関係ですが
    ブルーカラー的能力に特化し、ホワイトカラー的能力には恵まれていないタイプの人間が就ける仕事が
    AIや新興国などのライバルの出現によってレッドオーシャンになりつつあるというのは否めないかと思います

    「先進国の上場企業で管理職が務まるレベルの能力を努力して身につけろ」

    この要求に、本当に誰もが応えることができるのか?と。

    (これは大げさではなく、
    日本人が日本でアルバイトではなく正社員として採用されようとした時に
    普通に要求されることです)

  3. >「先進国の上場企業で管理職が務まるレベルの能力を努力して身につけろ」
    >この要求に、本当に誰もが応えることができるのか?と。

    日本の上場企業で管理職をやっている人間が
    スーパーマン・スーパーウーマン
    ばかりなら、

    東芝不正会計事件という見事なブラックジョーク 週刊プレイボーイ連載(207)
    ttps://www.tachibana-akira.com/2015/08/6922

    みたいなことは起きません。

    youtubeにしくじり企業という動画がありますが、
    ttps://www.youtube.com/channel/UC1KM0FPG8NvCWKRZURZZEfQ

    仮に自分がこれらの企業の中の人だったとしても、
    危機を回避可能であったかどうかはわかりません。

    私が橘さんに聞きたいのは

    自分(橘さん自身)と
    読者(尖沙咀)がどうやって生き残っていくか
    ということであって、

    日本人の1/3は実は低能であることを
    暴露して溜飲を下げ安心することではありません。

    高学歴だった「低能先生」は
    いったいどうしたらよかったのですか?

  4. 尖沙咀さんのおっしゃる通りに、今の橘さんは暴露して溜飲を下げ安心するコラムや本ばかりですね。

    初期の橘さんはどうやって生き残っていくかという橘さんなりの方向性も提示してました。

    橘さんは種本から引用するまとめサイト的なものになって仕舞ったんでしょう。

  5. 尖沙咀様&山田様へ
    2人の意見は正しいと思いますが、橘さんに彼自身の能力以上のことを求めるのはいかなものでしょうか?
    なお私は、パスカル曰く「人間はひとくきの葦にすぎない。自然のなかで最も弱いものである。だが、それは考える葦である。」でありませんが、個々に日常生活の中で時間をかけて考えて考え抜いて各々が解決策を提示・実行するしかないでしょうと思います。

  6. >2人の意見は正しいと思いますが、橘さんに彼自身の能力以上のことを求めるのはいかなものでしょうか?

    雑誌編集者として長年やってきて、たくさんの才能あるライターの膨大な原稿に接し、
    さらに作家としていろいろな本(税金逃れや海外投資、さらには女性のライフスタイル)
    まで出しているのだから、

    商売として新規読者(女性や若い世代)開拓も結構ですが、
    長年の読者である私を唸らせるような作品を期待しているのです。

    自分が書くのではなく、才能あるライターの代筆でも構いません。
    かつては、雑誌やムックで各方面目配せの効いた編集をしていたように。

    単に知能だけが人生を決定するのなら、

    低能先生IT講師刺殺事件や
    九州大キャンパス元院生焼死事件

    みたいなことは起きないのです。

  7. 新井さんの本を読みました。

    なんと、日本語が読めない分類にされました。
    だけど,,マーチ上わまる大学だけは出れてます。

    いろいろ参考にはなるけど。全面的に信用は不要かな

    そんなことより,国語教師のポジショントークを感じた。
    また,怖いのは機械語どうしで勝手にコミュニケーション
    するような、国語不在となるAIシチュエーション

    分かってないのに,,,AI投資家に物申すんな

  8. >なんと、日本語が読めない分類にされました。
    >だけど,,マーチ上わまる大学だけは出れてます。

    国語の試験問題は、
    論説文「筆者の理屈を(読者の主観を入れずに)理解する」問題と、
    小説分「筆者の心情をおもんばかる(読者の心と共鳴させる)」問題
    と実は2種類あって、

    有名作品がそのバランス(理屈と感情)が取れているから、
    読者の共感を呼んで、さらに作者の意見が作品を通じて主張されていることに
    気づかないといけませんな。

    国語の入試問題も、結局のところ
    「チャート式」や「解法のテクニック」
    であって、
    それを知っているか否かを問われているにすぎないのです。

    さらにいえば、同じ人が矛盾する言説を言ってしまうことすらあるのです。

    「障子破り」の「太陽の季節」でデビューした石原慎太郎が児童ポルノ規制
    しているように。

    橘さんも例外ではありませんよ。
    かつて、橘さんにこう質問しました。

    「オッカムの剃刀」と不愉快な世界 週刊プレイボーイ連載(178)
    ttps://www.tachibana-akira.com/2015/01/6643
    で、

    「より複雑な説明と、より簡潔な説明があった場合、後者を採用すべきだ」ということと、

    「”わかりやすい説明”ほど危険なものはない」
    ttp://diamond.jp/articles/-/56277

    ということとの整合性はどうお考えなのでしょうか?
    と。

    橘さんも、
    自ら「矛盾する言説」
    を言ってしまうこともあるのです。

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