ダイヤモンド社と共同で行なっていた「海外投資の歩き方」のサイトが終了し、過去記事が読めなくなったので、閲覧数の多いものや、時世に適ったものを随時、このブログで再掲載していくことにします。
今回は2016年2月25日公開の「リベラル化した欧州で「リベラルでないもの」に 分類されたイスラームを排除する論理」です(一部改変)。

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今回はフランスの人類学者エマニュエル・トッドの『シャルリとは誰か? 人種差別と没落する西欧』( 堀茂樹/文春新書)を参考に、移民問題で混乱するヨーロッパについて考えてみたい。
2015年1月7日、パリの風刺雑誌『シャルリ・エブド』がイスラーム過激派の武装集団に襲われ、編集長やスタッフ、警備の警官など12人が殺害された。この衝撃的な事件を受けてフランス全土で、「私はシャルリ」の標語を掲げた多数の市民が街頭に繰り出した。
ドイツのメルケル首相、イギリスのキャメロン首相など各国要人も加わった1月11日のパリの追悼大行進には160万人、フランス全土では450万人を超えるひとびとが「シャルリ」であることを宣言したという。子どもやデモに参加できない高齢者を除けばフランス人の10人に1人が「シャルリ」を名乗ったことになり、トッドはこの未曾有の事態を受けて「シャルリ=デモ参加者とは何者か」について考察することになる。
トッドはいま、この本によって「多くの侮辱」を受け、フランス国内では表現の自由も討論の自由もない状況に置かれているという。
トッドは、追悼デモの参加者をこう評した。
「私はシャルリだ、私はフランス人だ、私には、自分のカトリシズムに対するのとまったく同様に他者たちのイスラム教に対しても冒涜する権利があり、さらにその義務さえもある」
これでは知識層のみならず、デモ参加者全員が激怒するのも当然だろう。なぜトッドはこんな“カゲキ”なことをいうのだろうか。 続きを読む →