『2億円と専業主婦』新書版あとがき

新刊『2億円と専業主婦』から、出版社の許可を得て「新書版あとがき」を掲載します。

****************************************************************************************

本書をこのようなかたちでリメイクした理由はプロローグに書いたので、ここでは自著の紹介をさせていただきます。

この本は『幸福の「資本」論』(ダイヤモンド社)のスピンオフとして、読者の幅を広げたいという“野望”のもとにつくられましたが、その後、高校生から大学生、20代の若者向けに『人生は攻略できる』(ポプラ社)と、30代から40代のサラリーマン向けに『働き方2.0vs4.0』(PHP)の2つのスピンオフが生まれました。

どれも(当然のことながら)コンセプトは同じですが、読者層に合わせて話題を変えているので、興味があれば手に取ってみてください。

原著の「あとがき」では珍しく個人的なことを書いたのですが、その後、大学を卒業してから30代半ばまでの「バカだった時代」のことを『80’s(エイティーズ)』(太田出版)という本にまとめました。こちらも読んでもらえるとうれしいです。

なお、「夫婦(カップル)でこれからの人生を考える」というコンセプトから、本書では旧版にあった「課外授業:母子家庭というリスク それでも知っておかなくてはならないこと」は削除しました。とはいえ、シングルマザーになるといきなり日本社会の最底辺に落ちてしまうという現実は、残念なことにいまも変わりありません。

この深刻な問題については、別のところで「母子家庭を生活保護の枠組みから切り離して支援する」という提案をしています。これも、いずれちゃんと論じてみたいと思います。

本書を最後までお読みいただいた方には蛇足でしょうが、ここでは専業主婦という生き方を「道徳的」に批判しているわけではありません。ただし、私たちの生きている自由な市場経済で、「ゆたかさ」は経済合理的な選択の積み重ねからしか生まれないのです。

2019年10月 橘 玲