ゴーン保釈でわかる日本の「白人崇拝」 週刊プレイボーイ連載(383)


二度目の逮捕をされた日産の元会長カルロス・ゴーン被告に対し、東京地裁は検察の強い反対にもかかわらず再保釈を認める決定をしました。「10連休」直前の4月25日のことですから、「祝日で取り調べもないのに不当に被告を勾留している」との海外からの批判を避けるための、当初からの規定路線だったのでしょう。

この決定に対して検察幹部は「裁判所は完全にひよっている」と怒っていますが、その検察にしても、取り調べに弁護士の立ち会いを認めていないことについて、「それぞれの国にそれぞれの歴史や法制度があり、自分の国と異なることを理由に批判するのは妥当ではない」という「排外主義」的な言い訳をしたあと、ひたすら沈黙を守っています。その代わり、日本のメディアにさかんに捜査情報をリークして自分たちに有利な世論をつくろうとしているのですから、立派なことをいえる立場ではありません。

今回の再保釈で誰もが思い出すのは、森友学園事件で逮捕された元理事長夫妻でしょう。

大量の報道によって2人の顔は日本じゅうに知れ渡っており逃亡はほぼ不可能で、徹底した捜査で隠蔽すべき証拠もなくなっていました。それにもかかわらず、否認を理由に10カ月も長期勾留されたのです。

ゴーン被告には海外逃亡に必要な資金も語学力もネットワークもあり、事件の複雑さを考えれば隠滅すべき証拠や口裏合わせが必要な証人がいることもじゅうぶんに考えられます。再逮捕後は、すべての容疑を否認し黙秘してもいます。

だとしたら、ゴーン被告と森友学園の元理事長でいったい何がちがうのでしょうか。

それはもちろん、「国籍」と「人種」です。

だれもがうすうす気づいているように、裁判所の判断は、「日本人ならなにをしてもいいが(著名な)外国人はマズい」であり、「欧米の白人は特別扱い」ということです。なんのことはない、この国の「欧米(白人)崇拝」は明治の鹿鳴館時代からなにひとつ変わってはいないのです。

リチャード・アーミテージ氏はアメリカの対日政策に大きな影響力を行使しましたが、そのインタビューで「自民党の政治家が、「アーミテージさん、ガイアツをお願いします」とやってくるので閉口した」と語っていてびっくりしたことがあります。自分たちで改革案を出すと叩かれるので、「アメリカにいわれて仕方なくやる」という話にするためだそうです。アーミテージ氏はリアリストなので、アメリカの国益に合致すれば引き受けていたようですが。

こうして、「日本はなにもかもアメリカの言いなりだ」と怒るひとたちが出てきました。しかし実態は、「外圧でしか改革を進められない」ということだったのです。なぜなら国民の政治不信が強く、政治家の言葉など誰もまともに聞かないから。

そう考えれば、今回の「外圧」にも意味はあります。これからは日本人の被疑者も、「ゴーンは保釈されてなぜ自分は勾留されるのか」と堂々といえるからです。

こうして「中世の魔女裁判」と揶揄された日本の司法も、すこしずつ「近代」に向けて進みはじめるのでしょう。まあ、たんなる希望的観測ですが。

『週刊プレイボーイ』2019年5月13日発売号 禁・無断転載

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7件のコメント

  1. 「自分たちより進んだ社会」に対する

    憧れや(それの裏返しでもある)反発は
    どの国の民族にもある

    「ヒューマン・ユニバーサル」

    ですよ。
    現在のアジアからの
    日本のインバウンド観光・消費も
    その一つのあらわれですな。

    ちょっと前の
    「裁判員制度」
    なんて、もろ
    欧米の「陪審員制度」
    のサルマネでしょ。

    さて、
    ゴーンも小沢一郎も佐藤優もホリエモンも
    「目立つとやられる」
    をやり玉にあげて、

    一罰百戒、つまり
    一人の人の過失を罰することによって、関係するその他多くの人々の同じような罪や過失をあらかじめ戒めようとすること

    としたい
    検察の目論見があるのは明らかですな。

    これが日本が
    「伽藍社会」
    であることの証左なのです。

    橘さんに聞きたいのは、

    「伽藍からバザールへ抜け出す方法」
    なのです。

  2. 一番の問題はマスコミでしょ。
    結局マスコミが異常に外圧に弱いためにこの現象が現れるのです。

    普通の国のマスコミは防衛反応が働いてすぐ外圧に対抗する論を展開します。
    日本ではそれが無く大手マスメディアは外圧に迎合してばかりです。

  3. 「検察の世界は(も)損得勘定」だからでしょう。
    橘さんも著書の小説で「特捜部は広告塔(広報だったかも?)ですから」と書いていますし。
    白人という切り口は時代遅れな感じが。

  4. 経営危機に陥った日産を立て直すため、ルノーから送り込まれた
    カルロス・ゴーンこそ、

    外圧でしか改革を進められない
    日本を象徴していたのですが、

    ルノーの意向に沿って
    日産をルノー子会社化することに対する
    クーデターこそが
    今回の事件の真相でしょうな。

    三菱ふそうトラック・バス株式会社は
    いつのまにか
    ダイムラーAGの一部になってしまいました。

  5. 平均身長を始め、見た目(身体的、器質的)の部分で相違がある(劣っている)ので
    そこが解消されない限り永遠の課題となるでしょう。
    耳障りのよい平等論、精神論より、現実を受け入れて
    (何世代か…)時間はかかっても、身体的に欧米に追いつくようにする政策(例えば食品流通の改善とか)が必要なのではと思います。
    現代の坂本龍馬みたいな人は現れないかもしれませんが。

  6. そもそも、カルロス・ゴーン自身が、

    レバノン系ブラジル人
    つまり
    アラブ系のルーツを持つわけで、

    白人すなわち欧米系(特にアングロサクソン人)
    ではありません。

    人種というより、
    どこの国で生まれ、どんな教育を受けてきたか?
    ということの方が重要ですね。

    日本人でも海外で生まれ海外で教育を受けてきた人は
    良し悪しは別にしても
    ドメスティックな日本人とは感覚が違いますね。

  7. カルロス・ゴーンって、レバノン人でアラブ民族のはず、でも「白人」なの?

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