法学と経済学は日本のアカデミズムではまったく別の学問として扱われているが、法律の目的を社会の厚生を最大化することだと考えれば、法(とりわけ民法や経済法)の根拠は経済合理性にあり、法律家はミクロ経済学やゲーム理論等の知見を活用して市場の効率化を目指すべきだ、ということになる。こうした観点から法学と経済学を統合する(というよりも、法学を経済学の一部に組み込む)のが法と経済学だ。
法と経済学は、国家(政府)の市場への介入は最小限にすべきだとしながらも、市場参加者は常に経済合理的に行動するわけではなく、市場も完全無欠の制度ではないという理由から、国家の市場への介入が正当化できる場合があることを認める。だがそれは、きわめて限定された状況だけだ。
ここでは、私自身の備忘録も兼ねて、福井秀夫(『ケースからはじめよう 法と経済学―法の隠れた機能を知る』)が日本経済新聞「経済教室」(2008年8月26日)に寄稿した「『安心・安全』と真の消費者利益-安易な介入強化許すな」から、法と経済学が考える国家(権力機構)の役割を挙げておこう。 続きを読む →