母子家庭を生活保護から切り離しては? 週刊プレイボーイ連載(321)


生活保護費のうち、食費などの生活費をまかなう「生活扶助費」が今年から大幅に引き下げられることになりました。この決定についてはさまざまな議論があるでしょうが、いちど整理してみましょう。

まず、福祉社会の最大の敵はモラルハザードであり、生活保護制度を守るためにはフリーライダー(ただ乗り)を排除しなければなりません。働いてこつこつ年金保険料を払ってきたひとよりも、一銭も払わずに生活保護で暮らす方が得であれば、バカバカしくて誰も年金制度に加入しようとは思わないでしょう。

もちろん、年金保険料を払えなかったやむをえない事情があるひともいるでしょう。しかしその一方で、ネットには「ナマポ(生活保護)で暮らせばいいんだから年金保険料なんて払わない」という書き込みがいくらでも見つかります。世界でもっとも高度な福祉社会である北欧諸国は、「国家の保護に頼ってはいけない」と道徳の授業で子どもたちに教えているといいます。日本も社会保障をもっと充実させるべきだと考えるなら、フリーライダーにきびしく対処することを受け入れなくてはなりません。

年金には「マクロ経済スライド」が導入され、物価水準に応じて支給額が減額されるのですから、生活保護費をそのままにすればいずれ損得が逆転してしまいます。年金保険料を納めてこなかった高齢者の生活保護費を国民年金の水準以下にするのは、制度を守るためにこそ不可欠です。「そもそも低所得者の年金が低すぎる」との批判があるでしょうが、だとしたら1000兆円もの借金を抱えた国がどうすればいいのかも合わせて提言すべきです。

しかしこうした事情は、母子家庭ではまったく異なります。高齢者の多くは健康上の理由で働くことができませんが、母子家庭の母親は20代から40代ですから、適切な支援があれば仕事をして収入を得、税金を納めることができます。子どもは学校を卒業して働きはじめ、やはり納税者になります。そのように考えれば、母子家庭の生活保護費を高齢者に合わせて引き下げることに合理的な根拠はありません。

母親と子どもにとっても、日本の社会と納税者にとっても、もっとも望ましいのは母子家庭の収入を最大化するような制度です。そのためには保育園や託児所の充実など、母子家庭の母親が独身女性や共働きの母親と同じように働ける環境をつくっていくことが必須です。

日本社会の大きな問題は、母子家庭の世帯収入が、児童扶養手当などを入れても一般世帯の3分の1程度しかないことです。一人あたりの平均所得の半分に満たない額が「貧困線」ですが、日本のひとり親世帯では、貧困線以下の割合が54.6%と先進国のなかで群を抜いています。それなのに、母子家庭の就労率は85.4%と、女性が働くのが当たり前のデンマークやスウェーデンより高いのです。これは、生活保護を受給すると子どもがいじめられると危惧しているからでしょう。

生活保護費の切り下げで母子家庭を罰してもなにひとついいことはなく、未婚率が上がって少子化がますます進むだけです。いま必要なのは、負のイメージしかない生活保護制度から母子家庭を切り離し、子どもを連れて離婚することがハンディキャップにならない社会をつくっていくことなのです。

『週刊プレイボーイ』2018年1月22日発売号 禁・無断転

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9件のコメント

  1. 母子家庭を生活保護から切り離し、母子家庭への給付金が増えれば、

    生活保護をもらっている世帯の(仮装)離婚が増えるだけのような・・・

    そもそも、「リバタリアン」を自称する人間が、

    >まず、福祉社会の最大の敵はモラルハザードであり、生活保護制度を守るためには
    >フリーライダー(ただ乗り)を排除しなければなりません。

    と言ってしまうことこそ最大の自己矛盾なのです。

    リバタリアンにとって、
    「日本の生活保護のあるべき姿」
    を提示していただきたいですな。

    (Wikipediaより参考)
    リバタリアンは「徴税」によって富を再分配する行為は公権力による強制的な財産の没収であると主張する。曰く、ビル・ゲイツやマイケル・ジョーダンから税金を重く取り、彼らが努力によって正当に得た報酬を人々へ(勝手に)分配することは、たとえその使い道が道義的に正しいものであったとしても、それは権利の侵害以外の何物でもなく、そうした行為は彼らの意思によって行われなければならない。すなわち、貧困者への救済は国家の強制ではなく自発的な仕組みによって行われるべきだと主張する。

  2. そもそも、なぜ母子家庭は貧しいのか?
    父子家庭は紙飛行機愛好家より少ないから政治観に無視される。
    二言目には男女差別だ!と騒ぐ人たちは
    母子家庭の数を父子家庭の数と同じにしろ!と騒げ。

  3. 仮装で離婚などやらない言い訳
    子供が辛い思いしますから、そこまでアホではない
    起きたら起きたで対応していけばよいこと
    で、記事の主張は賛同しますが、少子化対応ということでしょうから母子家庭だけではなく所得の低い育児家庭に対しての対応を行うべきだと思いますね

  4. 片親世帯のみ、生活保護を受けながら働けるようにしたらどうでしょう?
    そうすれば、勤労意欲は失わないまま、今よりは確実に楽になると思うのですが。

  5. アメリカ並みに養育費を取り立てればいいだけ
    何で馬鹿母の面倒を税金でみてやる必要がある
    下種父から国が取り立てろ

  6. >コメントを急いで投稿し過ぎているようです。もう少しゆっくりお願いします。

    だってさ。

    でももう、面倒臭いからベーシックインカムでいいじゃない。

  7. この国の財政やらカネの問題は、詰まる所公務員の給与が高すぎること及び人数が多すぎることに尽きると思います。取り敢えず早急に着手すべきは、公務員の給与を最低賃金にまで引き下げることでしょう。なんせ最低賃金で生活できるといってるのは他ならない公務員ですので、それで生活してもらい国民に範を示してもらいましょうよ。そうやって財源を確保した後、社会保障やらの問題は考えればいいと思いますけどね。

  8. 母子家庭を優遇することは、「離婚を助長するのか!?」とモラルを声高にさけんでる偽善者たちがゆるさないだろうし、
    ある一部の女を優遇することは、なによりまず、他の女達が許さないんじゃないかとおもう。票にもならないし。

    でも、橘さんのおっしゃる通り、子連れ離婚でも不利にならないようになったら、女性はもっと自由になれるとおもう。

    日本は、父子家庭の方が、プレミア感があるらしく、離婚して子供を捨てたバカ女から子供を守り育てるいい父親、と思われるけれど
    母子家庭だと、見る目がなくて馬鹿男とけっこんしたか、男に捨てられたか、わがままで気の強い女だから、罰を受けて当然、という扱いですよ。

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