増税反対もネオリベ批判もじつは統計が間違っていた? 週刊プレイボーイ連載(257)


2014年4月に消費税を8%に引き上げたあと、14年度の実質GDPは前年度比0.9%減のマイナス成長に陥りました。リフレ派はこれをもとに、「増税すればアベノミクスがだいなしになる」と大合唱し、安倍首相は消費税の10%への引き上げを2度にわたって延期しました。

しかしこの数字には、当時から疑問の声が漏れていました。第二次安倍政権が発足して以来、日銀の大胆な金融緩和によって為替は1ドル=80円から14年末に119円まで下落し、大手企業の収益改善で日経平均株価も1万円から1万7500円まで上昇していたからです。市場の実感は「景気はよくなっている」というもので、だからこそ実質GDPのマイナスは大きな衝撃だったのです。

ところがここにきて、驚くべき数字が出てきました。日銀の調査統計局長が、日銀職員による個人論文と断ったうえで、14年度の実質GDPは2.4%増、名目GDPは30兆円も多い519兆円だったと述べたのです。

これほど大きなちがいが生じたのは、内閣府が政府の公式統計などをもとにGDPを算出しているのに対し、日銀の論文は住民税や法人税などの納付状況から経済活動を推計しているからです。専門家のあいだでは日銀の方式がより正確との意見が多いようですが、だとしたら消費税増税をめぐるあの大騒ぎはなんだったのでしょうか。増税しても景気が回復しているのなら、「経済学博士」の肩書きを持ついい年をした大人が罵詈雑言を浴びせあう見苦しい姿を見る必要もなかったはずです。

同様の混乱は小泉政権時代にも起こりました。2006年にOECD(経済協力開発機構)が発表した「対日経済審査報告書」で、日本の相対的貧困率はアメリカと並んで高いと指摘されたのです。これによって「一億総中流」の常識は覆され、「ネオリベ(新自由主義)のせいで経済格差が拡大した」との批判に火がつきました。

しかしこの統計に対しても、「深刻な人種問題を抱えるアメリカと同じなんて、いくらなんでもおかしい」との疑問が囁かれていました。

手品の種明かしは、じつは単純でした。人生にはいいこともあれば悪いこともありますから、その他の条件がまったく同じでも、高齢化によって自然に経済格差は大きくなっていくのです。

その後、専門家によって「高齢化の影響を調整すれば、日本の経済格差が拡大しているとはいえない」との反論が続々と出てきますが、「ネオリベ批判」に血道をあげるひとたちはこの不都合なデータに耳を貸そうとはしませんでした。ところが実際には、家計調査データで「貧しさのために生活必需品を買えなかった」割合を調べると、日本は国際的にもっとも経済格差が小さな国であるばかりか、小泉改革で格差が縮小していることがわかったのです。ここでも、あの大騒ぎはなんだったのか、徒労感を覚えるのは私だけではないでしょう。

でもこれは、小泉改革で日本がよくなったという話ではありません。データによれば、日本企業のリストラによって年功賃金のカーブがゆるやかになった(中高年に高い給与を払わなくなった)ため、所得が下の層にさやよせされて、より「平等」な社会になったのです。

参考:本川裕『統計データが語る 日本人の大きな誤解』

『週刊プレイボーイ』2016年9月5日発売号
禁・無断転載

 

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28件のコメント

  1. 要するに、「統計」もデータを取る側の恣意性によって、
    どうとでも取れるという話でしょ。

    まさにこれが「統計」でウソをつく方法なのです。

    多変量解析を少しかじったことがありますが、
    主成分は分析者によって「意味付け」する必要があります。

    ということは、分析者の主観によって意味合いが違ってくることになります。

    子どもの学歴と親の年収には強い相関関係がありますが、
    だからといって金持ちのボンボンが賢いわけではないでしょ。

    ゆめゆめ、「ビッグデータ」とかいう戯言に騙されないように!

  2. 中高年をカモに犠牲にして、国や企業は食い続けていると言う指摘に読めました。

    ならば、人を救う仕事が間違いなく就職先として有望ではないでしょうか?
     
    医療は当然ながら
    中高年を救う法律事務所とか
    あるいは、財務省と距離おく金融機関とか
    あるいは、人的魅力で信じられないほどの教祖をいただいた宗教団体とか

    職業いろいろですが、
    筆者は間違いなく若者のふるまいに大きく期待してる!

  3. >医療は当然ながら
    >中高年を救う法律事務所とか
    >あるいは、財務省と距離おく金融機関とか
    >あるいは、人的魅力で信じられないほどの教祖をいただいた宗教団体とか

    医療関係は、とめどなく膨張する厚労省権益(年金+医療)がさらに拡大するとは???
    法律事務所は、過払い金訴訟とか医療事故保証金で焼き畑式農業を続けているし、
    ほとんどのサラ金が銀行の傘下に入った現在、財務省と距離をおく金融機関というのはヤミ金だけですよ。
    さらに、第2第3の麻原ショウコーの出現を期待ですか?

    もし私が若かったら、情弱との情報ギャップにこそ、稼ぐスキマを見つけますけど。
    PCデポが高齢者カモ商法をやっていたように、情報弱者というのは何時の時代にも
    存在しますよ。

  4. 既存のバラダイムの延長では、尖さんの言うとおり、既得権長者を太らせるだけかもしれません。

    そこを若者の知恵と勇気でイノベーションを起こしてほしいと思います。

    すでに、各分野でちらほら兆しは見えつつあります。

  5. 貧しくて、欲がなく、正直で、平等を尊び、正義は必ず勝つと思う、大人しい人
    金持ちで、強欲で、ウソもつき、不平等OK、正義は怪しいと思う、元気な人

    リベラル系(特に日本の変種サヨク脳)は、前者を人間の鏡・後者を人間のクズと思い、
    自由商売系(特に多国で活動してる者)は、前者をクスブリ・後者を成功者の鏡と思う。

    宗教の教義を除けば、主に人類のイデオロギーは上記2つだから、統計も主に2つの
    傾向になるように操作されて当然だと思う。人間が作るものは、必ず作った者に都合
    がいいように作る。ホント、グーグル日本語変換は、Windowsではメンドー至極だ。

    まあ、橘さんの本を読んだり投資の経験を積んで生き残っているような人は、統計を
    まず疑ってかかる人種です。そういや最近、あのピケティの論文も確たるエビデンス
    なしと報道されていました。でもアレ売れたんで、彼も満足してるんじゃないかなぁ~

  6. >そこを若者の知恵と勇気でイノベーションを起こしてほしいと思います。

    若者に丸投げして、

    「あとは自分の才覚でやってね」

    ということは、かつての私みたいに
    「徒手空拳」だった者にとっては
    ちょっと酷ですね。

    ここは一つ、人生の先輩である中高年から、

    「合法と非合法のギャップにこそ、稼ぐネタがある!」

    というアドバイスをしておきます。

    ソーム省やNHKが
    ワンセグケータイにNHK受信料をかける
    ということを画策してますよね。

    それなら、
    NHKの映らないワンセグケータイを企画するとか、
    いっそのこと、ワンセグの代わりにyoutubeなら
    通信料がかからないケータイを企画するのです。

    やはり
    「上に政策あれば下に対策あり」
    ですよ。

  7. イノベーター志望であれば、ピーターティール著のゼロトゥワンの一読お勧めします。
     
    尖さんの言うとおり、ニッチから入ってどう広げていくかが書かれているからです。

    身近かな例を放送分野で言うと、AbemaTVかな。
    ネットテレビとでもスマホテレビとでもいいましょうか。

  8. NHKは将来的にはネット環境があれば支払い対象にするってあらためて言ってるんで、
    そのへんは無理っぽいですね。
    ああ、ただの一例だというのは分かってますよ。

  9. わしはアベマTVの社長の藤田は信用できん!

    政権寄りのテレビ局に、媚びを入れて擦り寄る協業など、
    日本男子の鏡じゃない。

    結果的に失敗したかもしれないが、昔正々堂々とテレビ局
    をスピーディーに買収しようとした、ホリエモンや三木谷
    こそ真の男子であり、わしは高く評価する。

  10. 匿名さん
    へー本当ですか
    NHKコンテンツを見ない人からも当局がお金取るようなら反対します。

    東北さん
    親戚の大学5年生に藤田さんの処女作の本を贈ったら軽く無視されました。
    体質が合わない人には合わないようです。ぜひ好きな人から学びましょう。

    ゼロトゥワンも読んでみたら、何らかの価値で競合より十倍の差を付けろ、とか書いてて
    壁のあまりの高さに愕然とするかもしれません。

    無から有を生み出す試みだからです。
    すると、有と有を組み合わせて新しい有を生み出すほうが手間ひまかからず楽だと気づくでしょう。

    それこそニッチな世界で、例えば相手の4倍と自社の3倍を掛け合わせ12倍を狙う試みも有りかと。

    いろいろな方法を知れば、違う方法を使う人もきっと許容の範囲に変わるような気がします。

  11. きわめて逆接敵な言い方になるけど その証拠が間違ってるなら右を左にすればいいわけだ

  12. 早め早めとか、曖昧なこと言うな、NHK

    高いスパコンを血税で買って、その程度かよ気象庁

    物理学者を加えて、デジタルで数字出せよ

  13. 早め早めとか、曖昧なこと言うなよ、NHK

    高いスパコンを血税で買って、その程度かよ気象庁

    国は物理学者を加え、台風リスクは数字で出せよ

  14. 若い人だけ向けて衣食住の分野で革新の提案させていただきます。

    1 衣
    いきなりすみませんが。しまむらやユニクロ超えるのは至難です。
    ここ衣はアイデアないかぎり捨てたいです。

    2 食
    肉の安全にチャンスあります。人件費高騰で、しわ寄せあるので。
    年寄りはともかく、若者はもっと率先して肉に神経使うべきかと。
    既存の仕組み超えるような、遺伝子レベルの新チェック法考えたく

    3 住
    地上でなく海洋開発にチャンスあります。海洋に多大な資源ある為
    ロボットやAIに潜水艦などの新技術を組み合わせ発明すること。
    世界が必要とする資源を圧倒的に効率よく獲得できるはずです。
    中東の資源国のように、将来の日本は低い税金でやっていけます。

  15. >
    >1 衣
    >いきなりすみませんが。しまむらやユニクロ超えるのは至難です。
    >ここ衣はアイデアないかぎり捨てたいです。

    ユニクロみたいな、アジアの人件費の安いところで作って高いところで売る
    というビジネスモデルはいつまでも続きませんよ。
    意外と「3Rビジネス」に活路あるかも。
    (高級ブランド品や思い入れのある衣料品・バッグなどを海外でリサイクル・リユース
    するシステムの確立など)
    高級ブランド品の再生品は堂々と「高級ブランド品」であることはまちがいないわけですから。

    >2 食
    >肉の安全にチャンスあります。人件費高騰で、しわ寄せあるので。
    >年寄りはともかく、若者はもっと率先して肉に神経使うべきかと。
    >既存の仕組み超えるような、遺伝子レベルの新チェック法考えたく

    肉などについては、すでにPCR(ポリメラーゼ連鎖反応 )法があり、
    https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9D%E3%83%AA%E3%83%A1%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%82%BC%E9%80%A3%E9%8E%96%E5%8F%8D%E5%BF%9C
    これを使えば、品種や作物や家畜の品種鑑定にも応用可能です。
    https://ja.wikipedia.org/wiki/DNA%E5%9E%8B%E9%91%91%E5%AE%9A

    >3 住
    >地上でなく海洋開発にチャンスあります。海洋に多大な資源ある為
    >ロボットやAIに潜水艦などの新技術を組み合わせ発明すること。
    海洋開発にはコストが掛かりすぎるというリスクがあります。
    海底資源の回収のための機械をつくるとか、
    たとえば、充電池で必要なリチウムは海水中に大量に存在しますが、
    それだけを選択的に回収するのは至難の業です。

  16. 尖沙咀さん
    コメントありがとうございます。
    少し補足させてください。

    1 若者に安売り競争に参加させたくないため衣は捨てたいと思いましたが。R法は確かにありそうですね。

    2 肉の安全を考えだした背景には、ダニエルTマックス著の「眠れない一族」を読んでからです。
    いわゆるプリオン病の予防が最大課題の一つかと。

    3 日本の強みの一つは、権益を主張できる海洋の大きさで世界屈指、第3位?にあることだと思います。
    もしスイスやモンゴルのような内陸国家ならば資源開発の関心は宇宙に向かわざるをえないかと。

  17. >2 肉の安全を考えだした背景には、ダニエルTマックス著の「眠れない一族」を読んでからです。
    >いわゆるプリオン病の予防が最大課題の一つかと。

    狂牛病の全頭検査が廃止されたように、プリオン病のリスクは思ったほどではない
    というのが結論です。
    骨付き肉が見つかっただけであれほど騒いでいたのはなんだったのでしょうね。
    今はTボーンステーキも普通に食べられますよ。
    http://search.rakuten.co.jp/search/mall/t%E3%83%9C%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%BC%E3%82%AD/

    もっと言えば、恐ければ牛肉を食べなければよいわけですから。

    狂牛病に感染して死んだ人はいなくても、ふぐ中毒患者は後を絶ちません。

  18. 再びありがとうございます。

    二つだけ

    ・どうも牛だけで済まない研究あるようです

    ・子作り終わった尖沙咀さんのリスクは、どうでもいいかもしれないですが。
     将来ある若者には切実ですね

  19. >・子作り終わった尖沙咀さんのリスクは、どうでもいいかもしれないですが。
    > 将来ある若者には切実ですね

    実は私は食品衛生に関わった経歴があるので、この種の問題にはちょっと詳しいですよ。

    「食の安全」については、リスクとリターンの関係から、狂牛病の全頭検査は廃止になりました。
    肉骨粉を与えられた経歴のない牛の全頭検査は無意味だからです。

    イノシシの生肉がハイリスクなのは、寄生虫他のリスクがあるからです。同系統の
    SPF豚肉であっても、E型肝炎などの感染リスクがある以上、生食はしないほうが身のためです。

    だから、「自然=安全」、「人工=不安」というのは雁屋哲他が流したデマにすぎません。

    さらに中国産=危険、国産=安全という一般人の常識も正しいとはいえません。

    ひとつだけ言えることは、食品でも何にでも、それなりのリスクがある以上、
    「偏食の害」
    が一番大きいということです。
    http://www.tachibana-akira.com/2011/09/3278/comment-page-2
    ********************************************
    食品衛生に関わったことのある身からすれば、ある食材が汚染されていたとして、
    一番問題になるのは、「偏食の害」です。なにもこれは栄養学的なことをいっている
    のではなく、ある食材が汚染されており、それしか食べないと汚染の害を
    モロにうけることになります。福島産の汚染がいろいろいわれていますが、
    たとえば1回それを食べたぐらいでは影響は軽微ですが、それしか食べないと
    リスクは大きくなります。
    だから、ある銘柄米指定やどこどこ産の食材しか使わないみたいなのは逆に危険が大きく、
    節操もなく安いスーパーをはしごして安い食材を集めた料理の方が実は危険は少ないのです。
    いわば食材のモダンポートフォリオ理論というのがあるのです。

  20. いずれにしても、食の課題の提起して良かったです。

    文面からは、マックス著作を読んでないと分かるので読んで真の怖さ理解してからコメントくださいませ。

    祝!タンパク質の専門家によるノーベル賞受賞の夜です

  21. ヨーロッパからの愛ある皮肉か

    子々孫々の伝来が極めて重要だ

    タンパク質の遺伝に注意せよは

  22. >文面からは、マックス著作を読んでないと分かるので読んで真の怖さ理解してからコメントくださいませ。

    「ノストラダムスの大予言」を読んでなければ「恐怖の大魔王」が分からないでしょ。

    1999年7か月、
    空から恐怖の大王が来るだろう、
    アンゴルモアの大王を蘇らせ、
    マルスの前後に首尾よく支配するために。

    みたいなことを今でも真に受けているのですか???

    「北斗の拳」を持ち出すまでもなく、「破滅は最大のエンターテインメント」なのです。

    ノーベル医学生理学賞受賞記念で書き込みすると、

    あと、オートファジーという機構があるのに、
    「なぜ生物は常にタンパク質やアミノ酸を合成または摂取しなければならないのか?」
    ということは再度、問わなければならない設問ですな。

    言ってしまえば、ただ単に
    「中古車市場」が健全に回るためには、ある程度「新車が売れなければならない」
    ということなのですが。

  23. まっ 元既得権者を踏み潰さないまでも軽く乗り越えて

    より良い世界を開いていけると、タンパク質関係者には

    めちゃ記憶に残る日やわ

  24. 眠れない一族を図書館で一気読みしました。

    なるほど食の課題となる理由を理解しました。
    プリオンの影響ない民族もあるとのことですが
    日本人の大多数はNGの体質みたいで脅威。

    ベンゼンみたいな化学や生もの系のウィルスは
    ポートフォリオの分散論などで対策可。
    プリオンだけは別格で厄介。

    ランチの激安ハンバーグを注文しづらくなる。

  25. もし、ある種の「食肉の安全性」に問題があったとして、

    それなら、文明開化以降に日本人にクロイツフェルト・ヤコブ病などが
    多発するなど、肉を食べるようになった影響が出てますって。

    逆にイスラム圏では「豚肉禁止」で、
    ヒンズー教なら牛肉を食べないから影響が出ないでしょ。

    ということは、「肉の安全性への疑問」というのは、
    「白人などの肉食系民族への天誅!」
    であるというオカルト話になってしまいます。

    「肉の安全性」についても、
    やっぱり
    「統計学こそが最強の学問である」
    ですよ。

  26. ハンバーグとは、、たとえると危ない
    金融投資信託商品。

    リーマンショックが起きるまでは誰も
    気にしないブラックスワン。

    金融商品の方が、ハイリスクの株式の
    比率の被害だけで済むからまだまし

    おいらホルモン好きは既に踏んでるかも

  27. 効率第一主義には反対します。

    TPPなどのもっともらしい官僚の構想で、若い世代の健康が脅かされること危惧します。

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