『黄金の羽根の拾い方2015』お詫びと訂正(2)

『黄金の羽根の拾い方2015』P176に、「(法人の)登記にあたっては、銀行に資本金相当額を預け、出資金払込証明書を発行してもらう必要があります。」との記述がありますが、会社法の改正によってこの手続きは簡略化されているとのご指摘がありました。旧版の記述の元になった法人は2001年に設立しましたが、その後の変更をフォローできませんでした。

お詫びのうえ、該当箇所を下記のように変更します(電子書籍版は先行して修正します)。

「かつては法人登記にあたって、銀行に資本金相当額を預け、出資金払込証明書を発行してもらう必要がありました。ところが実際に銀行に依頼すると、取引がないことを理由に証明書の発行を断られることが多く、これがマイクロ法人設立の障害になってきました(オウム真理教のダミー会社の口座が某都銀に集中し、問題になったことがあるからだと言います)。

しかし会社法の改正によってこの手続きは簡略化され、現在は定款に記載された資本金が代表者の口座に振り込まれたことを通帳のコピーで証明できるようになり、払込証明書は代表者が自分で作成すればよいことになりました。なお法人設立後は、どれほど敷居の高い大手銀行でも、会社謄本さえあれば簡単にに法人口座を開設してくれます。」

第45回 欧州の美食家は北欧に集う(橘玲の世界は損得勘定)

イギリスの雑誌『レストラン』が発表する「世界のベストレストラン50」は、ミシュランと並ぶレトランランキングだ。2014年の1位はコペンハーゲンのノーマで、この4年間で3回トップを獲得している。

今年の夏に北欧に行く機会があったので調べてみたら、料理は1コースのみ、値段はワイン込みで1人約6万円、予約は3カ月先まですべて埋まっていた。平日のランチにキャンセル待ちの枠が残っていたので申し込んでみたのだが、残念ながら連絡は来なかった。あとで聞いたらやり方が逆で、ノーマの予約が取れてからデンマーク行きの日程を決めるのだそうだ。

ノーマの料理は“分子ガストロノミー”と呼ばれるジャンルで、スペインのシェフ、フェラン・アドリアが開発した。彼のレストラン、エル・ブリが4年連続で雑誌『レストラン』の1位を獲得したことで世界にその名を知られることになった。

分子ガストロノミーは化学実験のような調理法で、食材を液体窒素で瞬間冷凍したり、亜酸化窒素で泡状にしたりして、これまで経験したことのない味や食感を演出する。アドリアはそれを、日本の懐石料理からヒントを得て、30~40種類の小皿料理で提供したのだ。

ノーマのシェフ、レネ・レゼッピはこのエル・ブリで修行したのち、25歳で地元に戻って開業し大成功を収めた。それに刺激を受けて、これまで料理といえばスモークサーモンくらいしかなかったスウェーデンやフィンランドにもガストロノミーのブームが起きた。いまではヨーロッパの富裕層は、美食を楽しみに、フランスやイタリアではなく北欧にやってくるのだ。

せっかくなのでストックホルムとヘルシンキのガストロノミー・レストランに行ってみた。料理の種類も料金もノーマの半分程度だが、特殊な調理法による味覚の驚きはじゅうぶんに楽しめた。

北欧はヨーロッパでももっとも物価が高く、旅行シーズンが限られていることもあって夏のホテル料金は東京の倍はする。フレンチやイタリアンのちょっとした店に入っても、銀座や六本木で食事をするのとコストは変わらない。そのため地元のひとたちは、コンビニ(雑貨店)で出来合いの料理を買っている。

だが物価が高いということは、高額の商品やサービスが相対的に安く感じられる、ということでもある。これが、北欧でたちまち“美食”が広まった理由ではないだろうか。

食の世界がグローバル化すると、一流シェフは高い料金で料理を提供できる国に移っていく。
「日本の食文化は世界一」と思われているが、雑誌『レストラン』のアジア版では香港、シンガポール、バンコク、上海のレストランが大きく評価を上げている(アジアのナンバーワンはバンコクのタイ料理店だ)。

一人当たりGDPで、日本はアジアのトップから転落した(1位はシンガポール)。海外に進出する日本の料理人も多い。そのうち、「本物の日本料理を食べにアジアへ」という時代が来るかもしれない。

橘玲の世界は損得勘定 Vol.45:『日経ヴェリタス』2014年10月5日号掲載
禁・無断転載

001
鶏レバー、メレンゲとリンゴを添えて
002
自家製醤油でマリネしたウズラの卵
003
酵母をトーストしたクリームの生マッシュルーム包み
Gastrologik 料理名の翻訳は自信ありません…

『黄金の羽根の拾い方2015』お詫びと訂正

『黄金の羽根の拾い方2015』P176に、「法人を設立すると、労働基準監督署(労災)や公共職業安定所(雇用保険)、社会保険事務所(年金・健康保険)にも登録することになっていますが、常時使用する従業員が5人未満(つまり4人以下)であれば厚生年金や協会けんぽへの加入義務はありません。」との記述がありますが、これは誤りでした。

従業員数で厚生年金等への加入義務が異なるのは、「常時5人以上の従業員を使用する個人事業所(旅館、飲食店、理容店などのサービス業は除きます。)」で、法人については従来どおり「常時従業員を使用する株式会社や、特例有限会社などの法人の事業所」でした(上記の説明は日本年金機構)。

このルールは『黄金の羽根』旧版や『貧乏はお金持ち』のときと同じですが、改訂版作成にあたって基準が変わったと勘違いしました。お詫びのうえ訂正させていただきます。

該当箇所の記述は、下記のように変更します。

「法人を設立すると、労働基準監督署(労災)や公共職業安定所(雇用保険)、社会保険事務所(年金・健康保険)にも登録することになっています。厚生労働省は未加入の事業者に対し、租税情報などを活用して厚生年金・協会けんぽへの加入を促すとしていますが、現実には、マイクロ法人を含む小規模企業の大半は国民年金・国民健康保険を利用しています。」