消費税10%でサラリーマンの小遣いはなくなってしまう?

『納税通信』10月1日号に「消費税10%時の家計負担」という記事が掲載されていた。「野田内閣が消費税率を10%に引き上げた時の家計負担を試算していた」との朝日新聞(9月23日)の報道がベースになっている。

この試算は、消費税増税に批判的な民主党の国会議員に対し、内閣官房社会保障改革担当室が提示したもので、公表の予定はないというものの、消費税増税の国民負担について、はじめて政府による具体的な数字が明らかにされた。

政府の試算によると、年収500万円の4人家族(会社員の夫、専業主婦の妻と子ども2人)では、消費税引き上げにともなって家計負担が年間11万5000円増加し、これに年金・医療・介護保険料などの上昇、住民税年少扶養控除の廃止、子ども手当て(1人月額1万3000円)から児童手当(同1万円)への移行などを含めると、家計全体の負担増は年間33万8000円(1カ月2万8167円)になるという。

『納税通信』の記事が興味深いのは、この数字を、9月24日に新生銀行が発表した「サラリーマンのお小遣い調査30年白書」と比較していることだ。

「お小遣い白書」によると、飲食など自由に使えるサラリーマンの「お小遣い」は1990年の月額7万7725円をピークに減り続け、2012年には3万9756円まで落ち込んでいる。さらに、家計の状況は中高年ほど厳しく、2006年には20代と50代でお小遣いの平均額が逆転し、また「既婚子あり」のお小遣いは平均3万1328円と、「未婚」の5万394円よりも大幅に少ない(2012年)。家計が逼迫しているのは、子どもを抱える中高年世帯だということがはっきりわかる。

サラリーマンの家計が苦しい理由は、国税庁が公表した民間給与実態統計調査(平成23年度)で明らかだ。民間事業所の従業員(パート・アルバイトを含む)と役員の平均年間給与は409万円で、1997年の467万3000円をピークの下落を続け、22年前の1990年(平成元年)とほぼ同じ水準になってしまった。

また収入の内訳を見ると、賞与を含まない平均年間給与・手当ては上昇しているものの、平均賞与が大幅にダウンしている。業績悪化にともなうボーナスカットによって、サラリーマンの家計は資金繰りに窮するようになったのだ。

「納税通信」21012年10月1日

「既婚子あり」のサラリーマンのお小遣いが平均3万1328円で、消費税10%で家計負担が2万8167円増加すると、消費増税でお小遣いはなくなってしまうことになる。

デフレでも子どものいる家庭が経済的に逼迫するのは、教育コストが上昇しているためだ。子どものいる「標準家庭」の人生設計の破綻が明らかになれば、日本の少子化はますます加速されることになるだろう。