不倫疑惑の議員の当選を認めないひとと、選挙結果を認めないひと 週刊プレイボーイ連載(311)


総選挙が終わってから、暗い気分になる話題がつづいています。

ひとつは、不倫疑惑によって民進党を離党した女性議員の当選に対して、「無効票が1万票もあるのに834票差で当選したのはおかしい」として、「選挙をやり直せ」という電話が選挙管理委員会に大量にかかっていることです。なかには2時間半も抗議するものもあるとのことで、ここまでくると常軌を逸しています。

もちろん選管は「開票は公正に行なわれ不正はあり得ない」と述べており、抗議になんの根拠もありません。アメリカでは「ヒラリー・クリントンがかかわる小児性愛者の巣窟」とのフェイクニュースをネットに書かれたピザ店に銃をもった男が押し入り、発砲するという事件が衝撃を与えましたが、日本の民度もアメリカと変わりません。

もうひとつは、自公の与党で3分の2を獲得した選挙結果に対して、「総理の解散権の乱用」だとして、「こんな選挙は認めない」と主張するひとたちがいることです。「憲法で解散権を制限すべきだ」というのは今回の選挙が決まってから出てきた話で、それ以前にこんな改憲論は聞いたことがありません。これでは「安倍政権が勝つような選挙はするな」というのと同じで、かりに野党が政権をとるようなことがあれば自分に不利な“改憲”はすぐに忘れることでしょう。「出口調査では安倍政権を支持しないという回答が多かった」との声もありますが、これだと「選挙などせずに世論調査で政治を決めればいい」ということになってしまいます。

そのなかでもいちばんがっかりしたのは、“リベラル”な新聞が「共闘実現していたら」として、各選挙区の野党候補の得票数を単純合算し、希望の党から共産党までが共闘していれば63選挙区で勝敗が逆転したとの試算を載せていたことです。民進党が分裂したのは共産党との共闘を頑強に拒否する保守系議員がいたからで、右から左までごちゃまぜになった異様な政治組織に有権者が同じ投票をする根拠もありませんが、そんな事実をすべてなかったことにして空想(というか妄想)をわざわざ記事にするのでは“フェイクニュース”といわれても仕方ありません。

「与党圧勝」という有権者の判断を当然と思うなら、女性議員を当選させた有権者の“良識”を認めなければなりません。政治家は公職ですから「不倫」を批判されるのはしかたないとしても、選挙で当選したということは、政治家としての将来に期待する多くの有権者と強固な支援者がいたということです。これによって一定の責任を果たしたとわたしは考えますが、これに同意するなら選挙結果も有権者の判断として尊重すべきでしょう。

これは子どもでもわかるかんたんな理屈ですが、不倫疑惑の議員の当選を認めないひとと、安倍政権を「独裁」と批判して「こんな選挙は認めない」というひとはこのダブルスタンダードに気づかず、自らを“善”、相手を“悪”としてあいかわらずはげしく罵り合っています。

彼らはじつは、ものすごくよく似ています。冷静になってみれば、鏡には自分の醜い姿が映っていることに気づくのに……。

あっ、だからこのひとたちは冷静な議論を拒絶して、いつも怒っているんですね。

『週刊プレイボーイ』2017年11月6日発売号 禁・無断転載

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8件のコメント

  1. >彼らはじつは、ものすごくよく似ています。冷静になってみれば、鏡には自分の醜い姿が映っていることに気づくのに……。

    だから、橘さんに訊きたいのは、

    現状に不満があるのなら、それをのりこえるための

    「オルタナティブ」な方法=他にとるべき方法なのです。

    海外投資を楽しむ会(AIC:Alt-Invest-Com)」
    は、日本の投資環境に不満があるから、
    海外の投資環境を利用しようと始まったわけですよね。

    日本の政治環境に不満があるのなら、
    海外移住やそれこそPT「Perpetual Traveler(永遠の旅行者)」
    になれば問題は解決するかもしれませんが、

    かつてはジプシーとよばれていた
    ロマ
    になるだけですね。

    ジプシー ジプシー 恋に疲れたらどうなるの ジプシー ジプシー ひとりぼっちで果てるだけ

  2. 2時間半の抗議ワロタw
    別にいいじゃんw 生きてる実感っていうか、充実感感じてると思うよ?
    「俺は今、生きてるんだ!!」ってw
    某新聞の件もいいじゃん。ニーズあるところ商機あり。商売の基本でしょ?
    いいじゃないの。人殺してるワケじゃないんだし。多少、社会コスト使って付き合ってあげなよ。まだまだ日本は平和なんだからさ。

    >尖沙咀さん
    昔、ジプシーローズっていうポルノシンボル女性がいたらしいよ。いや、ジプシーつながりでさ。お互い、ポルノの話、好きじゃんw

  3. >>尖沙咀さん
    >昔、ジプシーローズっていうポルノシンボル女性がいたらしいよ。いや、ジプシーつながりでさ。お互い、ポルノの話、好きじゃんw

    もう若くないので、ポルノの話は・・・ですね。

    空耳アワーの常連ミュージシャンに
    「ジプシーキングス」:ジプシー・キングスのメンバーは、互いに兄弟・親戚関係にあるロマの一家である。というメンバーがいます。

    最高傑作は、やっぱり
    ベンベンマリアbyジプシーキングス
    ttps://www.youtube.com/watch?v=tS0R_n1WJHM
    ですね。

    このミュージシャンは自らジプシーと名乗っているのに、
    日本ではジプシーという言葉が使いにくくなったため、
    山口百恵の「謝肉祭」も
    ベストアルバムから外されたことがあります。

    それにしても、ニューアカデミズムが流行った80年代当時は、
    「ノマド」が歌謡曲のテーマになっていたのです。

    ジル・ドゥルーズとフェリックス・ガタリもびっくり!

  4. 「解散権の乱用の話」に付いて。
    この話は今回の選挙以前から問題視する声は多数ありました。
    少し検索すれば出てくる話ですが…

    今回の選挙に限らず、選挙の際には、各候補者や政党がどんなことを言っているのか、また既成政党なら実績はどうなのか等を、マスコミや有権者が精査する時間が必要だと考えますので、特定の勢力が圧倒的に有利なタイミングで、その精査する作業をさせないまま選挙が出来る権利がある、という状況を見直すべきだと思うのが私の考えです。

  5. 「首相の解散権」というのは、

    「最大4年という限月のあるオプション」

    なのであって、それがあるからこそ政局が安定するのです。

    逆に小泉郵政選挙で大勝利した自民党+公明党が
    限月まで引き伸ばしたため、民主党に政権奪取されたり、

    逆に民主党も野田政権で解散のタイミングを誤ったため大敗したわけです。

    「政治手法」というのも、

    「社会心理学に金融工学的なアプローチを加味したもの」
    で行う時代になりつつあるのです。

  6.  >「憲法で解散権を制限すべきだ」というのは今回の選挙が決まってから
     >出てきた話で、それ以前にこんな改憲論は聞いたことがありません。

    保守政治家・与党は、あえて成文化の規定は設けず、これまで上手に政治を進めてきた。
    ところが、”書いていない”事を理由に、まさかそんな幼稚な事はしないだろう、と言う処へ
    手を突っ込んできた首相が現れたので、今回問題となっています。

    法律がご専門でないにせよ、時評をされるのなら、
    せめて就活生程度に下読みをしないと『ワイドナショー』と同じレベルになりかねない。
    単純な事実誤認なので、以下、前提条件を再度確認された上で修整された方が良いのでは。ご参考迄。

     >また、宮澤喜一・元総理大臣も
     >「解散権は好き勝手に振り回してはいけない。あれは存在するが使わないことに
     >意味がある権限で、滅多なことに使ってはいけない。それをやったら自民党は
     >いずれ滅びる」と話したことがあるという。
      『AbemaTIMES』 :BLOGOS 2017年09月21日 08:25
    ttp://blogos.com/article/247392/?p=2

     >他方、2012年発表の自民党改憲草案には、憲法53条に
     >「二十日以内」という期限を設ける提案が盛り込まれている。
     >野党は、総選挙で、この規定の実現を訴えてみてはどうだろうか。自民党の
     >内閣が起こしてきた問題を繰り返さないために、自民党草案53条を実現しよう
     >というのは、何とも味わい深い改憲理由である。
      『衆院解散、やっぱり無視できない「憲法上の疑義」』
      木村 草太(憲法学者):現代ビジネス 2017/09/25
    ttp://gendai.ismedia.jp/articles/-/52964?page=3

    以上。

  7. もりかけ解散なら受けて立つとか言っておきながら、解散権の乱用とか、大義がないとか
    他人の不倫は厳しく非難して、選挙に当選したら不倫相手(本人は否定)を顧問にするとか、
    安保法制に反対しておきながら、希望の党に入るとか、そんで当選すれば手のひらを返すとか、
    ほんと野党はひどかった。

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