沖縄をタックスヘイヴンに(3)

ここでは、多くの反響があった「沖縄をタックスヘイヴンに」「沖縄をタックスヘイヴンに(2)」に関して、みなさまからいただいた疑問にこたえてみたいと思います。

(1)そもそもどうやって沖縄が自治権を獲得するのか?

これは当然の疑問ですが、沖縄のひとたちの総意として、米軍基地を受け入れることと引き換えに、日本政府に対して自治権を要求してみなければなにも始まりません。

沖縄県知事選で現職が再選されたものの、普天間基地問題はあいかわらず暗礁に乗り上げたままです。このままではなんの展望もないことは誰の目にも明らかですから、沖縄から具体的な妥協案が提示されたならば、日本国政府はそれを真剣に検討せざるを得ないでしょう。

(2)G8加盟国がタックスヘイヴンをつくるようなことが国際社会で認められるのか?

これはおそらく認められないでしょう。

しかしこの提案では、日本国政府は、米軍基地問題の解決のために、沖縄に内政上の自治権を付与するだけです。その後、沖縄がタックスヘイヴンになるかどうかは、沖縄のひとたちの総意によります。

日本国は、外交や安全保障に影響を及ぼさないかぎり、沖縄の(内政上の)決定を尊重するだけです。したがって、日本国が国策としてタックスヘイヴンをつくるわけではありません。

(3)沖縄がタックスヘイヴンになれば、日本経済が大きな損害を受けるのではないか?

一概に、タックスヘイヴンの存在が国の経済にとってマイナスになるわけではありません。香港は、中国にとって金の卵を産むガチョウです。イギリスは、シティ(ロンドン)と自治領や旧植民地のタックスヘイヴンをネットワークすることで、金融立国として生まれ変わりました。

ここでは参考までに、G8加盟国の国民が母国語で取引可能なタックスヘイヴンを挙げておきます。

  • アメリカ:主にカリブ海のタックスヘイヴン(金融の国際語は英語なので、すべてのタックスヘイヴンが利用可能)。
  • イギリス:チャネル諸島やマン島などの自治領。香港やシンガポールなどの旧植民地。およびそれ以外のすべてのタックスヘイヴン。
  • ドイツ:スイス(チューリッヒ)、ルクセンブルク、リヒテンシュタイン
  • フランス:スイス(ジュネーヴ)、モナコ
  • イタリア:カンピオーネ(スイスにあるイタリアの飛び地)、マルタ
  • カナダ:アメリカと同じく、英語圏なのですべてのタックスヘイヴンが利用可能。
  • ロシア:なし
  • 日本:なし

それ以外でも、中国人は香港、シンガポールで中国語(北京語、広東語、福建語)での取引が可能ですし、アラブ人はUAE(ドバイ)やバーレーンのようなアラビア語圏のタックスヘイヴンを利用できます。スペイン(アンドラ)、ギリシア(キプロス)、オランダ(オランダ領アンティル)のように、ヨーロッパの小国のなかにも母国語で取引できるタックスヘイヴンを持っているところもあります。

このことからわかるように、日本は経済大国でありながら、母国語のタックスヘイヴンを持たないきわめて稀な国なのです。

(4)アメリカが、沖縄のタックスヘイヴン化を認めないのではないか?

意外に思われるかもしれませんが、沖縄のタックスヘイヴン化は、アメリカにとっても大きなメリットがあります。

  1. 香港に匹敵する東アジアのタックスヘイヴンをアメリカの影響下に置くことは、対中戦略上、重要な価値を持つ。
  2. 沖縄が米軍基地を受け入れれば、東アジアの軍事展開が安定する。
  3. 日本国からの「思いやり予算」はもう限界だが、タックスヘイヴン化で沖縄が世界でもっとも豊かな島になれば、基地費用の追加負担が可能になる。

タックスヘイヴンが脱税に利用されることについては、(ヨーロッパ諸国のように)アメリカ居住者および日本と沖縄に居住するアメリカ国籍(市民権)保持者の口座開設を認めないようにすればいいでしょう。

この条件であれば、アメリカは「沖縄タックスヘイヴン」を積極的に支持する可能性すらあると思います。

(5)中国が、沖縄のタックスヘイヴンを認めないのではないか?

おそらくは、これが最大のハードルになるでしょう。

しかし中国は、自国に香港というタックスヘイヴンを持っていますから、タックスヘイヴンの存在自体を否定することはできません。

タックスヘイヴン化が沖縄の自治権(内政上の主権)に基づき、民主的な手続きによって決められたのであれば、直接の利害関係のないヨーロッパ諸国が強硬に反対する理由はないでしょう。そうであれば、アメリカの支持があれば、中国の反対を封じることは可能だと思います。

(6)沖縄が経済的なちからをつければ、将来、日本から独立してしまうのではないか?

遠い未来になにが起きるかは誰にもわかりませんが、すくなくとも北朝鮮が崩壊して韓国に統合され、中国が民主化して台湾の独立を認め、中国国内の民族問題も解決して人民解放軍の解体にちかい大規模な軍備縮小が行なわれ、存在意義を失った米軍が日本や沖縄から撤退しないかぎり、沖縄が日本とアメリカの安全保障の傘の下から離れるという選択肢はないでしょう。

このような平和な世界が訪れたときに(残念ながら、私たちが生きてそれを見ることはないでしょうが)琉球国が独立するかもしれませんが、その頃には「国家」というものにたいした意味は残っていないにちがいありません。