あなたの性格を「簡易ビッグファイブ検査」で判定する

新刊『スピリチュアルズ 「わたし」の謎』では、パーソナリティ心理学のビッグファイブを8つに拡張して、「わたしもあなたも、たった〝8つの要素〟でできている」と述べましたが、「そもそもビッグファイブ検査って何?」というひとのために、同書から簡易版の検査をアップします。

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自分のパーソナリティを確認したいひとのために、2007年に心理学者のベアトリス・ラムステッドとオリバー・ジョンがつくった「BFI-10」というビッグファイブの判定基準を紹介しておこう。たった10項目の質問に答えるだけのごく簡単なものだが、より詳しい性格判定基準との一致率は84%ででじゅうぶん実用に耐えるとされる (*)。

以下の性格を表わす文(1)から(10)に、1から5の点数をつけてください。

1点=強く反対する
2点=少し反対する
3点=賛成でも反対でもない
4点=少し賛成する
5点=強く賛成する

(1) 能動的な想像力をもちあわせている( )
(2) 芸術への関心はほとんどもちあわせていない(  )
(3) ていねいな仕事をする(  )
(4) なまけがちだ(  )
(5) 一般的に信頼できる(  )
(6) 他人の欠点を探しがちだ(  )
(7) ゆったりしていて、ストレスにうまく対処できる(  )
(8) すぐにくよくよする(  )
(9) 外に出かけるのが好きで、社交的だ(  )
(10) 遠慮がちだ(  )

(1)と(2)は経験への開放性、(3)と(4)は堅実性、(5)と(6)は協調性、(7)と(8)は情動の安定性、(9)と(10)は外向性にかかわる。

それぞれのペアごとに奇数番号のスコアから偶数番号のスコアを引き算し、ビッグファイブに対応するスコアを計算する。スコアは「マイナス4」(とても低い)から「プラス4」(とても高い)までの幅がある。

(1)と(2)の合計がプラス4なら「経験への開放性が高い」、マイナス4なら「経験への開放性が低い」となる(以下同)。あまりに簡単だと思うかもしれないが、他人はあなたに対してこの程度のことしか気にしていないのだ。

とはいえ、このようなテストをしなくても、これまでの説明で自分のパーソナリティがわかったのではないだろうか。自分がどのようなキャラで、まわりからどのように見られているかは、社会のなかで生きていくのにものすごく重要なので、誰もが自分のことをかなり正確に理解している。「ほんとうの自分が見つからない」とか、「自分のことがわからない」といいながらも、実際にはみんな自分のキャラを強く意識しているのだ。

将来的には、SNSのビッグデータをAIで解析することで個人ごとのパーソナリティを正確に評価できるようになるだろう。じつはこれはすでに行なわれていて、PART2で紹介したパーソナリティ判定システムはケンブリッジ大学が公開しており、「Apply Magic Sauce」のホームページに自分のSNSデータをアップロードすることで体験できる(https://applymagicsauce.com/demo)。

残念なことに日本語には対応しておらず、私が自分のツイートを読み込ませたところ「年齢24歳」になった。どこかの野心的なベンチャーがこの日本語版を開発したら、「自分さがし」をしている多くのひとへの朗報になるだろう。

ビッグファイブ検査についてより詳しく知りたいなら、村上宣寛、村上千恵子『主要5因子性格検査ハンドブック三訂版 性格測定の基礎から主要5因子の世界へ』(筑摩書房)を参照されたい。

(*)Beatrice Rammstedt and Oliver P.Johnb(2007)Measuring personality in one minute or less: A 10-item short version of the Big Five Inventory in English and German, Journal of Research in Personality

『スピリチュアルズ 「わたし」の謎』あとがき

出版社の許可を得て、新刊『スピリチュアルズ 「わたし」の謎』の「あとがき」を掲載します。本日発売です。

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私はもともと、心理学の「性格診断」などというものをまったく信用していなかった。その考えを改めざるを得なくなったのは、ドナルド・トランプが当選した2016年の米大統領選をきっかけに、「SNSのビッグデータをAIに読み込ませるだけで有権者のパーソナリティが分析できる」「10の『いいね!』を見るだけで同僚よりも相手のことがよくわかるようになり、70の『いいね!』で友人のレベルを超え、150の『いいね!』で両親、250の『いいね!』で配偶者のレベルに達する」という驚くべきファクトを突きつけられたからだ。

それから、なぜこのような不思議なことが起きるのかを調べはじめた。本書はそこから得た知見をまとめた最初の試みで、これから何冊か「心理学のパラダイム転換」についての本を書いてみたいと考えている。

私はこれまで1年のうち3カ月ほどを海外で過ごしてきたが、未知の感染症によって旅に出ることはできなくなった。本書は、自宅と仕事場をひたすら往復する日々のなかで書き進めたものだ。

その作業のなかで、自分のパーソナリティをよりはっきりと理解できるようになった。

まず、私の内向性パーソナリティは平均より高い。五感が他人より敏感ということはないが、賑やかなところは苦手で、パーティなどにもほとんど出席しない。とはいえ、知らないひとと話をするのが嫌いというわけではなく、編集者時代は、のちに日本国の総理大臣になる政治家からヤクザの親分まで、面白そうなひとには片っ端から会いに行った(オウム真理教のサティアンも取材で訪れた)。

内向性スコアが高いと依存症になりにくいというが、たしかになにかにこだわるということはない。ギャンブルにはまったく興味がないし、若いときに吸っていたタバコもさしたる苦労もなくやめられた(イランを旅したときは、アルコールのない環境にすぐに順応できた)。所有や収集への欲求もほとんどなく、別荘はもちろんマイホームやマイカーももっていない。

新型コロナでわかったもうひとつの内向性のメリットは、他者との接触を避ける「新常態」に向いていることだ。この1年、家族以外とはほとんど対面で会わなかった(Zoomでの打ち合わせやインタビューはあった)が、それをストレスに感じたことはない。

抑うつ的になったことはあまりないので、神経症傾向はさほど高いわけではないだろう。だが楽観的かというとそんなことはなく、最後はどこかで野垂れ死ぬだろうと思っているところはある。本書も含め、自分が書くものに「抑うつリアリズム」が強く反映していることもわかっている。

社会に反抗するようなことはないが、中学生の頃から組織のなかでうまくやっていけそうにないことは自覚していた。サラリーマン経験はあるものの10年ちょっとで、いまはもの書きという自営業をしているのだから、同調性は他人より低いだろう。

共感力は女性よりは明らかに低いが、男性の平均程度ではないかと思っている(そもそも共感力の高い男というのをあまり見たことがない)。Qの尻尾は左側に書くタイプだ。

堅実性は、もの書きになってから原稿の締め切りをいちども遅らせたことがないので、高い方ではないかと思う。ただし、意味がないと思うことでもこつこつやる、ということはまったくない。

知らない土地を旅して、自分とはちがうひとたちと出会うのが面白いと思っているので、経験への開放性は平均より高いのではないか。芸術的なセンスはないが、みんなが話題にしているものには関心がない、という傾向はある。

読者も、本書から同じように、自分のパーソナリティについてなんらかの気づきを得られたのではないだろうか。自分を知ることが大事なのは、けっきょく、自分がもっているものでなんとかやっていくしかないからだ。

近年の「コネクトする脳」仮説では、ヒトの脳は「つながる」ように設計されていると考える。徹底的に社会的な動物であるヒトは、ごく自然に他者と交流し、助け合い、競争する。そればかりか、わたしたちはイマジネーション(想像力)によって、祖先や歴史上の人物、アニメやマンガ、ゲームなどのヴァーチャルなキャラとも「つながる」ことができる。わたしもあなたも、客観的には、時空を超えた巨大なネットワーク(世界)のひとつのノード(結節点)に過ぎない。そのきわめて小さなノードの一つひとつが、主観的には〝神〟だと錯覚しているところに、人生のよろこびと絶望があるのだろう。

この本は、そんなスピリチュアルをテーマにした当初の構想の前半にあたる。私の理解では、心理学におけるもうひとつのパラダイム転換は、「無意識は自らの死すべき運命を拒絶しようとしている」という「死の回避(存在脅威管理)理論(*1)」で、後半はそれに基づいて宗教や神秘主義などスピリチュアリティを論じたいと思っていたのだが、そうなると分量が大幅に増えていつ完成するかわからないので、残念だが次の機会にしたい。本書は、『残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法』『(日本人)』(ともに幻冬舎文庫)に続く三部作として読んでいただければと思う。

私の他の著作と同様に、本書のベースにあるのは進化論だ。思想や感情が脳の産物である以上、それは長大な進化の過程で、生存や生殖を最適化するために「設計」されたプログラムと考えるほかはない。驚異的なテクノロジーの進歩を背景に、将来的には、人間や社会に関する学問分野はすべて進化論に収斂していくはずだし、事実、心理学、社会学から政治学や経済学(あるいは哲学、宗教学)に至るまで、人文科学系の学問は脳科学や遺伝学、進化生物学、進化心理学、ゲーム理論などの自然科学に侵食され吸収されつつある。日本の「文系知識人」の多くはいまだにこのことに気づいていないようなので、あえて指摘しておく(*2)。

わたしたちは誰もが、スピリチュアル=神として、自分だけの物語を生きている。これは、人類が数万年、あるいは数十万年前に自己(過去から未来へとつづく物語)を獲得したときに運命づけられたのだろう。それは祝福でもあり、呪いでもあった。

78億の物語は重なりあって共鳴し、ときに熱狂を生むとしても、本来は別々のものだ。わたしとあなたの物語が完全に重なりあうことはなく、孤独はつねに人生とともにある。

「自分さがし」というのは、突き詰めて考えるなら、自分のキャラ(パーソナリティ)とそれに合った物語を創造することだ。おそらくは、人生にそれ以外の意味はないのだろう。

*1
アーネスト・ベッカー『死の拒絶』平凡社、シェルドン・ソロモン、ジェフ・グリーンバーグ、トム・ピジンスキー『なぜ保守化し、感情的な選択をしてしまうのか 人間の心の芯に巣くう虫』インターシフト

*2
詳しくは拙著『「読まなくてもいい本」の読書案内 知の最前線を5日間で探検する』(ちくま文庫)を参照されたい。

わたしもあなたも、たった〝8つの要素〟でできている(『スピリチュアルズ 「わたし」の謎』はじめに)

出版社の許可を得て、新刊『スピリチュアルズ 「わたし」の謎』の「はじめに」を掲載します。発売日は6月23日(水)ですが、この週末には大手書店の店頭にも並びはじめると思います。

心理学=人間科学でいま、大きなパラダイム転換が起きています。ぜひ私の驚きを共有してください。

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この本では、「わたしは何者か?」という人類史上最大の謎に挑む。

などというと、「なにをバカなことをいってるのか?」と笑われそうだが、これは誇大妄想の類ではない。

近年の脳科学や進化心理学、進化生物学、行動遺伝学などの急速な進歩によって脳=こころの秘密が徐々に明らかになり、いまや「新しいパラダイム」の心理学が登場しつつある。この「驚くべき理論」は人間についての理解を根本的に書き換え、もしかしたらあなたの人生を変えてしまうかもしれない。

それをひと言でいうならば、「わたしもあなたも、たった〝8つの要素〟でできている」になる。

「最先端の科学」といっても難しい理屈が書いてあるわけではない。どの話も、自分やまわりのひとたちに当てはめれば納得できることばかりだろう。「新しいパラダイム」の心理学は、「なぜ自分はこんなふうなのか」「あのひととはなぜわかりあえないのか」など、誰もが漠然と感じていた日常的な疑問に明快にこたえてくれるのだ。

ところでこの理論には、まだちゃんとした名前がつけられていない。心理学のパラダイム転換はさまざまな分野で同時並行的に起こっているので、それを統一的に記述した一般向けの本もほとんどない。だとしたら、誰かがやってくれるのを待つより、自分で書いた方が手っ取り早いと思いついて、「スピリチュアル理論」と名づけることにした。

スピリチュアルというのは、心理学でいう「無意識」に「魂」を重ね合わせた言葉だ。脳科学の知見は、意識が無意識と対立している(あるいは意識が無意識を制御している)のではなく、じつは「わたし」のほとんどすべてが無意識で、意識はその一部(あるいは幻想)でしかないという膨大な知見を積み上げている。「わたし」というのは、突き詰めれば「無意識/魂」の傾向のことなのだ。

わたしたちは一人ひとり異なる複雑で陰影に富む性格(パーソナリティ)をもっているが、それはいくつかの基本的な要素に還元できることもわかってきた。これはパーソナリティ心理学では「ビッグファイブ」と呼ばれていて、「外向的/内向的」「楽観的/悲観的」「協調性」「堅実性」「経験への開放性」のことだ(本書ではこれを8つに拡張している)。その意味では、「わたし」はこれらの要素の組み合わせでしかない。

ここで、「それなら聞いたことがある」とか「性格診断のようなものでしょ」と思ったひともいるかもしれない。

大学などで教えているパーソナリティ心理学では、類型論と特性論から始まって、フロイト流の精神分析学(精神力動論)、ジョン・ワトソンやB・F・スキナーの行動主義、カール・ロジャーズなどの現象学的心理学、マーティン・セリグマンのポジティブ心理学など、パーソナリティに関するさまざまな心理学の流派を網羅的に解説する。「ビッグファイブ」は、そのなかのひとつのエピソードにすぎない。
これから述べることは、それとは

ぜんぜんちがう。

きっかけは、たまたまネットで読んだ記事だった。フェイスブックから大量の個人情報が流出したと大騒ぎしていた頃だから、2018年春だろうか。

その記事によると、フェイスブックの「いいね!」をコンピュータに読み込ませるだけで、それ以外のデータがまったくなくても、どのような人物なのかをきわめて高い精度で予測できるという。その後、頻繁に引用されるようになったインタビューでは、ミハル(マイケル)・コシンスキーというスタンフォード大学准教授が、「このアルゴリズムを使えば10の『いいね!』で同僚よりも相手のことがよくわかるようになり、70の『いいね!』で友人のレベルを超え、150の『いいね!』で両親、250の『いいね!』で配偶者のレベルに達する」と述べていた。

ほんとうにそんなことがあるのか、不思議に思って元の論文を読んでみると、「白人か黒人か」を95%、「性別」を93%、「ゲイ(男性同性愛者)」であることを88%、「(支持政党が)共和党か民主党か」を85%、「キリスト教徒かムスリムか」を82%の精度で予測できたという。「このソフトウエアを使えば、本人が明かしたくないと思っている知能、性的指向、政治的立場などを企業、政府、あるいはフェイスブックの友だちが知ることができる」のだ(*1)。

もっと驚いたのは、フェイスブックの「いいね!」から性格(心理的特性)を予測できることだった。これをSNS(ソーシャルネットワーク)のビッグデータと組み合わせれば、感情的に不安定な(神経症傾向の高い)ユーザーに「安全」を強調した広告を提示するような心理操作が実現可能になる。現実にトランプ陣営は、2016年の大統領選で、コシンスキーの研究に基づいた心理プロファイリングと行動ターゲティングを大々的に行なったのではないかと疑われている。

「いいね!」だけから、あなたが何者かわかってしまう。なぜこんな「魔法」のようなことができるのか。論文によると、「マイパーソナリティ」というフェイスブックのアプリでユーザーに心理テストを行ない、5万8000人あまりの「いいね!」のビッグデータを統計解析(アマゾンやネットフリックスの「おすすめ」に使われているSVD/特異値分解)して、プロフィールや顔写真、知能指数、パーソナリティ、生活満足度、ドラッグの使用履歴などの質問でわかった属性との相関から予測モデルをつくったらしい。──いまならAI(人工知能)にディープラーニング(深層学習)させてより高い精度を実現できるだろう。

このときにコシンスキーたちが使ったのが「ビッグファイブ」で、この「魔法(心理予測モデル)」の中核をなす理論とされていた。そこから興味を感じてあれこれ調べていくうちに、それがとてつもないパワーをもっていることに衝撃を受けた。
ビッグファイブでは、わたしたちの性格(パーソナリティ)を5つの(本書では8つに拡張しているが)要素の組み合わせだとする。このシンプルな理論によって、「わたしは何者なのか?」「わたしとあなたはなぜちがっているのか?」という、人類がずっと抱きつづけてきた疑問が科学として解明できるようになった。

これは控えめにいっても、とんでもない「事件」だ。実際、ビッグファイブを「パーソナリティ研究のルネサンス」「いまや新しい科学が出現しつつある」と述べる心理学者もいる(*2)。「わたし」や「あなた」についての理解を一変させてしまうそのスゴさはとうてい要約できないので、これから(私と同じように)驚いてほしい。

脳は長大な進化の過程で、スピリチュアル(呪術的)なものとして「設計」された。

わたしたちにとっての世界(社会)は、「わたし=自己」を中心として、家族、友人、知人、たんなる知り合い、それ以外の膨大なひとたちへと同心円状に構成されている。他者を中心とした世界を生きているひとはいないし、もしいたとしたら精神疾患と診断されるだろう。

ひとの生活は、起きているときと寝ているときに大きく分かれる。眠りに落ちると世界は消え(あるいは夢の世界に変わり)、目が覚めると(現実の)世界が現われる。目を閉じると世界は消え、目を開ければ世界が現われる。

「なにを当たり前のことを」と笑うかもしれないが、この体験はとてつもなく強力だ。スピリチュアル=無意識は(おそらく)、自分が世界の中心にいて、すべてを創造したり、消滅させたりしていると思っているのだ。

わたしたちはみな、人生という「物語」を生きている。スピリチュアルが「神(世界の中心にいる創造者)」なら、人生という舞台のヒーローやヒロインは、当然、自分になるに決まっている。もちろん、すべての男がスーパーヒーローで、すべての女がお姫様を演じるわけではない。社会が複雑になるほどさまざまな物語が生まれ、そこには多種多様な役柄があるだろう。そのなかには「はぐれ者として生きる」「愛するひとを支える」という物語があるかもしれないが、それでもつねに「主役」は自分なのだ。

だとすればパーソナリティとは、スピリチュアル=無意識が創造する「人生という物語」のヒーロー/ヒロインの「キャラ」ということになる。

脳の基本OSは人類共通でも、そのなかのいくつかの傾向は個人ごとにばらつきがある。そのささいなちがいをわたしたちは敏感に察知して、「性格」とか「自分らしさ」と呼んでいる。ビッグファイブというのは、一人ひとりが演じる物語のキャラを〝見える化〟したものなのだ。

以下の構成だが、最初に「心理学のパラダイム転換」を理解するうえで必要となる基礎知識をざっと説明する。次に、「ビッグファイブといったって、これまでいろいろ出てきた俗流心理学の亜流で、しょせん一時の流行なんでしょ」というもっともな疑問をもつひとのために(じつをいうと私もそう思っていた)、イギリスの「ケンブリッジ・アナリティカ」という選挙コンサルティング会社のスキャンダルを紹介する。この会社はビッグファイブの心理プロファイリングを使って、2016年にイギリスがEU離脱を決めた国民投票と、アメリカのトランプ大統領誕生に大きな影響を与えた(ある意味、「世界を変えた」)とされる。フェイスブックの「いいね!」から、なぜ人種や性別、性的指向や政治的立場が予測できるかもわかるだろう。

それ以降が本論で、「こころ(無意識)の傾向=特性」を進化的に古いものから説明していく。とはいえ、これはあくまでも私の理解なので、既存のパーソナリティ心理学のビッグファイブ理論とはかなり異なったものになるはずだ。

パーソナリティはビッグファイブ(およびそれ以外の3つの特性)の組み合わせで、現代社会にうまく適応できるものと、適応が難しいものがある。これがいま深刻な社会問題を引き起こしているのだが、最後に「成功するパーソナリティ/失敗するパーソナリティ」としてその概略を述べておきたい。

この地球上には78億人を超えるひとたちが暮らしているのだから、世界には78億の物語があることになる。

それではこれから、スピリチュアルズの世界をともに旅することにしよう。

*1
Michal Kosinski, David Stillwell and Thore Graepel (2013) Private traits and attributes are predictable from digital records of human behavior, PNAS
*2
ダニエル・ネトル『パーソナリティを科学する 特性5因子であなたがわかる』白揚社