人生はゲームのように攻略できる? 週刊プレイボーイ連載(376)

「恋愛はゲームなのか?」と訊かれれば、ほとんどのひとは「そんなことない」というでしょう。でも、彼はあの娘が好きで、その娘はじつは別の男が好きで……みたいな話は「恋愛ゲーム」といわれます。

だったら、人生はゲームでしょうか? もちろんそんなことはありませんが、恋愛と同じく、ゲームに似た要素がないわけではありません。

誰でも知っているように、ロールプレイングゲームには、「これだけはぜったいやってはいけない」とか、「この場面ではこうすべきだ」という鉄則があります。鉄則にもとづいて戦略を立てればゲームの攻略は容易になり、なにひとつ知らなければいつまでたってもレベル1のままでしょう。

同様に、人生という「ゲーム」にも鉄則があります。といっても、秘密の裏ワザがあるわけではなく、そのほとんどは誰でも知っていることです。

六本木などで豪遊しているひとたちが「お金持ち」として紹介されますが、使った金額を上回る収入を維持できなければ家計は火の車です。アメリカの富裕層研究では、億万長者は庶民と変わらない質素な暮らしをしていることがわかりました。「お金を使えばお金は貯まらない」というのがここでの鉄則です。

「好きを仕事に」というのも大事な鉄則です。これはしばしば「わがまま」とか「世の中を甘く見ている」と批判されますが、まったくのまちがいです。

「人生100年時代」になって、「定年までひとつの会社で働いて、退職金をもらって悠々自適」というかつての人生設計はかんぜんに行き詰まりました。これからは70代まで、あるいは80代になっても働きつづけるのがふつうになっていくでしょう。

「仕事は生活のための苦役だ」としたり顔で説教する大人がいます。そうなると、20代から80代まで60年以上にわたって苦役に耐えつづけなくてはならなくなります。これは、控えめにいっても「拷問」です。これで若者に向かって、いったいどんな「夢」を語ることができるというのでしょう?

成功には「圧倒的な努力」が必要だそうです。どんな分野でも、トップに立つような一流のプロは最低でも1万時間(約3年)のきびしい訓練をしているともいいます。

「成功は努力の結果」というのはたしかにそのとおりでしょうが、人一倍頑張れるのは「好きなこと、得意なこと」だからです。収容所のようなところに入れられて、3年間もイヤなことを無理矢理やらされたら、ほとんどのひとはおかしくなってしまうでしょう。

そう考えれば、これからの時代を生き延びるのに必要なのは、「好きを仕事にするための戦略」です。

仕事が面白ければいつまでも働けますから、経済的な不安はなくなります。「定年後」に困惑するのは定年があるからで、「老後問題」は老後が長すぎるという問題ですから、生涯現役なら問題そのものがなくなってしまいます。

この世に生を受けた以上、だれもがゆたかで幸福な人生を送りたいと願っているでしょう。そのためにはまず、ゲームのルールと鉄則を知らなければなりません。

新刊『人生は攻略できる』(ポプラ社)では、若者向けにそんな話を書きました。未来を上手に「設計」したい方は、ぜひ手に取ってみてください。

『週刊プレイボーイ』2019年3月18日発売号 禁・無断転載