ダイヤモンド社と共同で行なっていた「海外投資の歩き方」のサイトが終了し、過去記事が読めなくなったので、閲覧数の多いものや、時世に適ったものを随時、このブログで再掲載していくことにします。
今回は2016年8月公開の記事です(一部改変)

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イギリスのEU離脱を機に、日本では「EU=善なるもの」「イギリス=大馬鹿者」という善悪二元論がマスメディアに溢れた。その後、彼らが望んだような大破局(世界金融危機の再来)が起こらず、世界的に株価が逆に上昇したことで尻すぼみになり、最近では「イギリスのEU離脱はたいしたことない」との宗旨変えも増えてきたようだ。
株価が大きく下落すれば、それは「大惨事の予兆」だ。株価が回復すれば、「惨事は過ぎ去った」ということになる。それでなんとなく予測が当たっているように見えるのは、(プロの投資家を含め)金融市場の参加者が後付けの理屈に振り回されるからだ。こうして「エコノミスト」や「アナリスト」の予想どおりに(短期的には)相場が動く。これが「予言の自己実現」効果だ。
だがヨーロッパでいったい何が起きているのかを知ろうとすれば、もっと本質的な問題に目を向けなければならない。それはたとえばEUという壮大な政治・社会実験の構造的な欠陥で、そこから、日本では「大馬鹿者」と一蹴されているEU離脱派の論理にも耳を傾けるじゅうぶんな理由があることがわかるだろう。
参考 ブレグジット(イギリスのEUからの離脱)の論理をあらためて考える
「誰がEUを統治しているのか」問題
イギリスの国民投票でEU離脱派は「コントロールを取り戻せ」をスローガンに掲げたが、これが大きな効果を発揮したのは、EUが民主的な正統性を欠いているからだ。
EUの統治構造はきわめてわかりにくいが、その基本設計は(皮肉なことに)離脱を決めたイギリスの政治制度を踏襲している。 続きを読む →