ダイヤモンド社と共同で行なっていた「海外投資の歩き方」のサイトが終了し、過去記事が読めなくなったので、閲覧数の多いものや、時世に適ったものを随時、このブログで再掲載していくことにします。
今回は2013年11月公開の記事です。(一部改変)

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教皇ヨハネ・パウロ1世は、バチカンがフリーメーソンの秘密組織「P2」に侵食され、バチカン銀行が南米の麻薬取引をはじめとするマフィアビジネスに深く関わっていることを知り、バチカン銀行総裁マルチンクス司教の更迭を決めたが、その直後、1978年9月に在位33日間で謎の死を遂げた。
アンブロジャーノ銀行の頭取ロベルト・カルヴィは「神の銀行家」と呼ばれ、バチカン銀行との取引を一手に引き受けていたが、銀行は13億ドルの負債を背負って1982年に破綻し、カルヴィはロンドンのテムズ川にかかる橋で首吊り死体で発見された。
この驚愕すべき事件の後日談を膨大な資料を駆使して描いたのが、イタリアのジャーナリスト、ジャンルイージ・ヌッツィの『バチカン株式会社 金融市場をかす神の汚れた手』 (竹下・ルッジェリ・アンナ訳/花本知子・鈴木真由美訳/柏書房)だ。
「魔王」と呼ばれた男
数学・工学・哲学・神学の学位を取得し、企業経営者を経て51歳のときに天職として聖職者の道を選んだレナート・ダルドッツィは、その教養と豊富な社会経験を買われてバチカン銀行の醜聞処理を任されることになる。ダルドッツィは20年間にわたってメモや文書を丹念に整理・保存しており、その量は4000点に及んだ。生前はバチカンの掟に従って沈黙を守りつづけたダルドッツィは、その資料を知人に預け次のような遺言を残した。
「この書類を公表すること。何が起きたのかをみなが知るように」
ジャーナリストのジャンルイージ・ヌッツィはこの内部文書を入手し、バチカンのもっとも奥深い秘密を暴いた。 続きを読む →
