日本企業は「体育会系」大好き、日本社会は「運動部カルト」 週刊プレイボーイ連載(339)


すこし前のことですが、ヘッドハンティングを仕事にしているひとの話を聞いたことがあります。新しい部署や事業部を任せられる幹部を、年収1000万円から3000万円で探すよう頼まれるのだといいます。

ヘッドハンターによると、日本企業と外資系企業では採用基準がちがうそうです。

外資系企業が評価するのは学歴・資格・職歴・経験、そしてなにより実績で、男女の別や国籍・人種は問いません。それに対して日本企業は「男性」「日本人」が当然の前提で、女性や外国人はそもそも検討の対象にもなりません。

こういうところに日本企業の差別的な体質が現われていますが、それは容易に想像できます。興味深いのは、外資系企業がまったく関心を示さないのに、日本企業にとってきわめて重大な属性があることです。それが「体育会」です。

「いつも不思議に思うんですけど」と、ベテランのヘッドハンターはいいました。「大学の運動部出身というと、どこも大歓迎なんです。“えっ、この程度の実績でいいの”と思うようなひとでも、どんどん採用されていきます」

顧客の再就職が決まると、その年収に応じてヘッドハンターに報酬が支払われます。逆にいえば就活中はタダ働きになってしまいますから、できるだけ早く決めたいと思うのは人情でしょう。そこで日本企業から求人のオファーがあると、大学運動部出身者を優先的に斡旋するのだそうです。

ヘッドハンターが日本企業の経営者や人事部長に「なぜ運動部出身者がいいのか」と訊くと、そのこたえは常に同じで、「組織の文化に合っている」からだそうです。彼らが求めているのは、権力に対して従順で、先輩・後輩の序列を重んじ、「右を向いてろ」といわれたらずっと右を向いて立っているような人材なのです。なぜなら、自分自身がそうだから。

ここまで読んで、あの事件を思い浮かべたひとも多いでしょう。

相手選手に悪質なタックルをした学生が記者会見で述べたように、日大のアメフト部は監督がすべての権力をもつ独裁者で、その指示が絶対であるのはもちろんこと、言葉による指示がなくてもそれを「忖度」できなければ試合に出してもらうことすらできません。選手もコーチたちも監督に気に入られることだけに必死になり、自分たちの言動がどれほど常識と隔絶しているか気づかなくなります。

これはまさに「運動部カルト」で、ここまで極端な例は多くないとは思いますが、体育会の体質はどこも似たようなものでしょう。そしてこれは日本企業の体質であり、日本社会の体質でもあります。

今回の事件にみんな憤激していますが、カルトが生まれるのはそれを容認する土壌があるからです。日本人は「体育会」が大好きなのです。

当たり前の話ですが、根性と気合と浪花節では冷徹で合理的な経営をするグローバル企業に太刀打ちできるはずはありません。

「無能な人材をよろこんで採用してるんだから、日本企業が国際競争から脱落するのは当然ですよ」と、ヘッドハンター氏は他人事のようにいいました。

『週刊プレイボーイ』2018年6月4日発売号 禁・無断転載

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9件のコメント

  1. >が求めているのは、権力に対して従順で、先輩・後輩の序列を重んじ、「右を向いてろ」といわれたらずっと右を向いて立っているような人材なのです。なぜなら、自分自身がそうだから。

    橘さんに伺いたいのは、
    事業拡張しようとして、

    「右向け右」と命令して

    「ここは左を向いた方が良いですよ」
    というような人材を採用しますか?

    なのです。

    AI+ロボットにより「マックジョブ」がどんどん減ることが予想されているのに、
    独自性をどんどん出すような人材は、それこそ途中で分離独立してゆきますよ。

  2. 悪質なタックル問題と日本社会と結び付ける人はたまに見ます。
    でもアメリカのアメフトでも相手選手を壊す命令をだしてた監督がいますよ。
    そしてそれを実行した選手もいます。
    これも日本社会のせいですか?

    橘さんの何時もの日本駄目論に結び付けることこそ典型的な日本の物書きの体質だとおもいますよ。

  3. 体育会系は上の言う事に絶対服従するなんて、人種差別や性的マイノリティに対する差別と同レベルの偏見ではないでしょうか?

  4. 腑に落ちる話です。

    「右を向いてろ」と言われ右を向いたとしても、並以上の知性がある人間なら、何のためにいつまで右を向いているのか、状況が変わったらどうするか、といったことを自分の頭で考え、いずれ質問するなり改善案を出すなりするでしょう。
    「いつまでも右を向いて立っている」のは体育会系の世界では当然なのかもしれませんが、そのように思考停止が習慣化した人間を好んで幹部として迎える企業ばかりでは、日本企業の生産性が先進国中最下位なのも当然ですね。

  5. >「いつまでも右を向いて立っている」のは体育会系の世界では当然なのかもしれませんが、そのように思考停止が習慣化した人間を好んで幹部として迎える企業ばかりでは、日本企業の生産性が先進国中最下位なのも当然ですね。

    サッカーファンの橘さんが
    「体育会系」気質や「運動部カルト」
    を批判している事自体が大きな矛盾なのです。

    サッカーのような
    「集団スポーツ」では、

    チームワークが第一で
    命令に対して素直に自分の役割分担を
    認識し実施する人材こそが求められます。

    これは「体育会気質」そのものですな。

    言い換えると
    「ゴールキーパーとして採用したのに、
    ゴールを離れて
    シュートを打ちに行くような人材」

    を採用しますか?

    ということなのです。

  6. 確かに。
    このネタをもっと社会経済的視点で広げて、
    新書あたりで出してみてはいかがでしょうか?

    日本の腐った、いや時代錯誤な風習に一石を投じ、
    今後必要とされるグローバルな企業への転換に役立つ気がします。
    是非。

  7. だから、なぜ電通は日大を助けないのか
    ということです。

    鬼のルールを作った創業者に誇り持っているなら
    日大を救えるはずです。

    上に疑問を感じず、猪突猛進するコミュニティが
    あってもいい。なぜ電通は、言えないのか?

  8. 体育会系>>企業の言いなり>>企業の利益追求

    消費者>>体育会系セールスで言いくるめられ>>損をする

    消費者にとって“体育会系のあるところに不正あり”だね

  9. >命令に対して素直に自分の役割分担を認識し実施する人材こそが求められる。

    命令が正しければその通りだと思います。
    しかし、日本の企業では、命令を出すのは過去の実績で出世した老人たちです。もし命令が正しくなければ、その企業に未来はないでしょう。

    無能な人間ほど無能な人間を回りに集めたがると言われています。あなたのような思考の持ち主が多い企業では、グローバルな競争に勝ち抜くのは難しいと思います。

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