沖縄をタックスヘイヴンに(2)

「沖縄が自治権を得たとしても、複雑な金融制度を自前でつくるなんて不可能だ」という意見がある。でもこの問題は、実は簡単に解決できる。

たしかに、オフショア金融センターに必要な法律や制度を地方自治体が一からつくりあげるなんて無理に決まっている。でもそれならなぜ、ジャージーやガーンジーだけでなく、ケイマン(カリブ海)やバヌアツ(南太平洋)といった小さな島々が、タックスヘイヴンとしてちゃんと運営できているのだろうか。

もちろんこれには、理由がある。彼らは、自分で法律なんてつくっていないからだ。

ウォール街の金融機関が、カリブ海のタックスヘイヴンを利用して節税(租税回避)スキームをつくろうと考えたとする。しかしそのためには、アメリカの税法の網の目を(合法的に)かいくぐるのに適した、効率的な法制度がタックスヘイヴン国になければならない。

そこでこの金融機関は、法律事務所や会計事務所に依頼して、彼らにとって理想の金融法制をつくりあげる。そしてこれを、タックスヘイヴン国に提案するのだ。

現実には、カリブ海の島々の金融制度はウォール街が、ジャージーやガーンジーの制度はロンドンのシティがつくっている。タックスヘイヴン側は、それを運用・監督するだけでいい。

沖縄がタックスヘイヴンになれば、中国や韓国・台湾(そして日本)に租税回避ビジネスの巨大市場が生まれる。一攫千金を夢見る起業家たちは、「見えざる手」に導かれるように、最高の法律家と会計士を集めて、沖縄のために必要な法律・制度をつくってくれるだろう。それも、タダで。

こうして沖縄は、国際的なマネーロンダリング規制やタックスヘイヴン規制に準拠しながら、東アジアの企業や金融機関、投資家たちが合法的に利用可能な制度を自前で整備することができる。そしてこれは、(失礼ながら)財務省や金融庁のお役人がつくるよりずっと優れたものになるだろう。