すこし前に「日本では所得格差は拡大していないが、それはよい知らせではない」という記事を書きました。厚生労働省の報告書や経済学者の分析によれば、日本の所得格差は拡大していないばかりか、逆に縮小していたのです。ファクトに基づけば、「経済格差が拡大している」とあれだけ大騒ぎしたにもかかわらず、日本の実態は、「失われた30年のあいだ、みんなで平等に貧しくなった」になります。
これはかなり衝撃的な事実ですが、「所得格差は縮小していても、資産格差は拡大しているのではないか」という反論があるでしょう。これについては内閣府が、『日本における所得・収入・資産格差に関する長期的視点からの考察:1984年~2019年』という詳細な研究を発表しています。
資産は銀行預金のほか、おもに株式と不動産で保有されます。1990年代のバブル崩壊によって、日本では株価も地価も大きく下落し、その結果、富裕層の資産が減って格差は縮小しました。
その後、株価・地価が下げ止まると、資産格差は徐々に拡大しはじめます。ところがこの格差拡大は、富裕層の資産が増えたというよりも、現役世代のなかで金融資産をまったく、あるいはほとんどもたない世帯が増えからだというのです。
この傾向が顕著なのは単身世帯で、とりわけ若い世代で、金融資産1000万円超の独身もいれば、金融資産ゼロの独身もいるという二極化(世代内格差)が進んでいます。日本では、単身世帯が増えることで資産格差が拡大しているのです。
研究はその理由について述べていませんが、真っ先に思い浮かぶのは「ロスジェネ世代」でしょう。就職氷河期で正社員になれなかったひとたちは、収入が少ないために資産形成できず、男性は低収入だと結婚が困難になるので、単身世帯が増えているのかもしれません。
これはたしかに説得力がありますが、女性にはあてはまりません。データによれば、女性は収入が少ないほど婚姻率が高いのです。――これは因果関係が逆で、結婚して専業主婦やパートになったから収入が少なくなったというのも考えられます。
それに加えて、日本経済が就職氷河期から人手不足に変わって、正社員として新卒採用されるようになった若い世代でも、単身世帯の増加と資産格差の拡大が観察されます。この現象は「ロスジェネ世代」では説明できません。
そうなると、もうひとつの可能性は「ソロ化」です。ある程度の収入があっても、家族をもつ予定がなければ資産を増やす必要はなく、趣味や推し活など好きなことにお金を使っているのかもしれません。
ライフスタイルの変化によって、所得の大半を消費にまわす「ソロ(単身世帯)」が増えると、マイホームの購入や子どもの教育費のために資産形成しようとする家族世帯とのあいだで資産格差が開いていくのです。
結婚するつもりのない若者の割合は増えつづけており、「ソロ化」はこれからますます進むでしょう。それにともなって資産格差が拡大していけば、日本社会のすがたは大きく変わるかもしれません。
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