“俺”ではなく“俺たち”を自慢する日本人 週刊プレイボーイ連載(102)


 

アメリカの高校生にリーダーシップがあるかどうか質問すると、7割が「自分は平均以上」と答えます。大学教授を対象とした調査では、94%が「自分は同僚より優秀だ」と回答します。平均より優れたひとは半分しかいないはずですから、これは明らかにおかしな現象です。

心理学では、無意識のうちに自分を過大評価することを「平均以上効果」といいます。私たちの住む世界では、ほとんどのひとが平均以上に知能が高く、平均以上に公平で、平均以上に車の運転がうまいのです。

自分に根拠のない自信を持つ傾向は、「ポジティブ・イリュージョン」として知られています。といっても、“幻想(勘違い)”なんだから矯正すべきだ、といいたいわけではありません。

子どもに対して「もっと現実を直視しなさい」と説教する親や教師がいますが、自己評価と他者の評価が一致している、すなわち“勘違いしていない”ひとの典型はうつ病患者です。あらゆる出来事をネガティブにとらえてしまうのがうつ病だとされていましたが、最新の研究では、彼らの自己認識は正確すぎてポジティブな勘違いができないのだと考えられるようになりました。

「日本人はうつ病にかかりやすい」という話を前にしましたが、このことは国際比較調査において、日本人の自己評価の低さとして表われています。

日米中3カ国の高校生約3400人を対象に行なわれた調査では、「私は他人に劣らず価値のある人間である」という質問に肯定的に答えた高校生はアメリカで89%、中国で96%だったのに対し、日本ではわずか38%でした。その一方で、「自分にはあまり誇りに思えるようなことはない」と答えたのは、アメリカ24%、中国23%に対して日本の高校生は53%と半数を超えます。

これを見ると“自己卑下(正確な自己認識)”が日本人の特徴といえそうですが、大学生を対象とした調査では、明らかに自分を「平均以上」だと答える項目が見つかっています。男女を問わず日本の大学生が「自分は他人より優れている」と思っているのは、“優しさ”“真面目さ”“誠実さ”です。知能や容姿のような比較が容易なものではなく、評価基準があいまいなものには過剰な自信を持てるのです。

だとすればこれは、「日本人は現実を直視できる」という話ではなく、ポジティブ・イリュージョンの表われ方が文化や社会によってちがっているのかもしれません。

社会心理学の研究によれば、日本人のもうひとつの特徴は、「人間関係を仲介として自分自身を高く評価する傾向」が顕著なことです。自分は平均以下かもしれないけれど、自分の夫婦関係や友人との関係は平均以上だと思っているのです。

個人ではなく関係性に依存するというのは、よい面も悪い面もあります。

日本人は“俺”ではなく“俺たち”を自慢しがちです。これが「自分はたいしたことないけど会社は一流だ」とか、「俺はリア充じゃないけどニホンは世界から尊敬されている」という意識につながっているとしたら、心当たりのあるひとも多いのではないでしょうか?

参考文献:菊池聡『「自分だまし」の心理学』

 『週刊プレイボーイ』2013年6月10日発売号
禁・無断転載

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参考までに、菊池聡『「自分だまし」の心理学』より関連するデータを示しておきます。

自己奉仕(セルフ・サービシング)バイアスは「よいことは自分のおかげ」と考える傾向で、ポジティブイリュージョンンの一種です。

これを見ると、もっともポジテイブイリュージョンの大きいにはアフリカ系、次いで東欧・ロシア、アメリカの順になっており、日本人はマイナス数値で“ネガティブイリュージョン”とでもいうべき特異な自己認識を持っているのがわかります。

同じヨーロッパ系白人でも、アメリカや東欧に比べ、イギリスや西欧の自己奉仕バイアスが低いのも興味深い結果です。

 

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11件のコメント

  1. やっぱり、日本人って世界でも特集な人種だと思う。もちろん自分も含めて。

    以前、毎日新聞のコラムで世界中の学生に、将来どんな会社に就職したいかアンケートとったら、たいがいの国ではGoogleやアップルが上位にくるんだけど、日本だけが上位にこない。

    そして、自分でイノベーションを起こして世界を変える、または驚かしたい、イノベーションに関わる仕事をしたいといった回答が多かったが、日本では、ほとんどこういった回答がない。

    遠慮しているのか、謙遜しているのか分からないが、回答から日本の学生が極端に消極的で控え目で保守的である結果になっている。

    こないだのAERAの特集で、東大の理系は女子が少なく、中高一貫の男子校出身者ばかりで、ほとんど彼女がいなくて、まともに同世代の女子と会話したこともない連中が多いとの事。ただ、外見は今風のイケメン。きっと童貞が多いのだろう。

    Xvideoの罪は大きいな!

    それから、笑ったのが、あるTwitterで最近の学生の服装が似通ってるというツイート。

    某駅のホームではデニムシャツにベージュのパンツを着た男子集団。

    某理工学部の教室内は同じようなチェックのシャツを着た男子学生ばっか。

    某ファミレスに集まってる女子学生全員の髪型がちゅっと茶色がかったセミロング。服装も同じような感じ。

    海外在住の日本人女性が、日本の女性誌に掲載されてる髪型やファッションがみんな同じに見えるとの事。

    あの就活生の全員紺色スーツは、何とかならないのかね。あの学生達からじゃ、とても画期的な商品やアイディアが生まれるとは思えない。

    海外で働いてる連中からすると、日本は住むには最高だけど、仕事をするには最低らしい。もちろん全員じゃないよ。

    日本代表の試合を見てると、なんとなく分かるな。今までも変わらないし、これからも変わらないのだろう。

    それこそが日本人のアイデンティティー!

  2. ●場違いを承知で、皆様にご相談●

    場違いを重々承知ですが、ここには金融レテラシーが高いと思われる方々が沢山おられると思いますので、皆様にご相談させて頂きます。アドバイスのほど、何卒お願いいたします。

    現在、住宅ローンを長期固定金利で2000万円借りていて、年の金利が3%で(60万円)とします。ここで繰り上げ返済可能な資金が溜まったとします。

    国家債務膨張により、今後金利が暴騰することがあった場合、この固定金利の借金2000万円は返済せずに置いておくと、お宝ローン(運用金利とのローン金利の差額が儲かる)となる可能性があるかと思います。

    とはいえ、いつ金利高騰が起こるかわらかず、それまで高い金利を払い続けるのも結構なコストです(年約60万円)。そこで、以下アイデアを思いつきました。 (橘玲氏著の「資産防衛マニュアル」を読んで)

    1)ローンは全て繰り上げ返済(以降年約60万円の金利を払わなくて済む)
    2)その代わり、以降支払っていたはずの金利(約60万円)分(またはその何割かでも良い)の「国債ベア」を毎年買う。

    「国債ベア」は金利高騰がなければ、時間とともに減価していきますがゼロにはなりません。 一方で、金利暴騰した場合は、数倍から数十倍に値上がりすることがありえると思います。

    つまり、金利暴騰に備えた保険(または宝くじ)として、「固定金利長期ローン」はやめて「国債ベア」に乗り換えたほうが、コストもリターンともに条件が良くなると考えて良いような気がします。

    つまり「掛け捨て(に近い)保険」「コールオプションの買い」と考えて、国債ベアを買っておくというという発想ですが、何か見落としている気もします。 なぜならば、両者を金融商品として考えた場合、「確実に良くなる」ということは理論上有りえないと考えるべきだからです。

    上記考えは間違ってますでしょうか?

    理論的な面、実際的な面、その他どのような角度からでも結構ですので、皆様のご意見、アドバイスをお聞かせ下さい。どうぞ宜しくお願いいたします。

    ※なお、金利暴騰など起こらないというご回答は固くお断りします。起こるかどうかを議論するつもりはりませんので、宜しくです。

  3. 個人の自己に対するポジテイブイリュージョンは社会変動的に見れば「上昇志向」と「流動化」につながると思うんですが、自由市場経済化にともなう人口の流動化が統治者によって管理されて来た日本の近代化に一因があるのではないでしょうか? 今で言えば、転職者、流れ者、新来者に辛い社会構造とか。分をわきまえろとか。また、たとえば、バリントン・ムーアの「独裁と民主政治の社会的起源」などを読めば、農民の流動化を抑制することによって日本の近代化が安定の中で進められたことが分かりますし、戦後についても会社組織が生涯福祉の肩代わりをする終身雇用制がやはり経済安定の基礎を作りましたよね。江戸時代型身分制近代化?

  4. >>さんじゅさん
    繰り上げ返済しなかった場合、手持ちの2000万から得られる金利や配当は考慮されていますか?
    元金返済のために毎月減っていきますが、結構な金額になると思います。
    ローン返済後、(破たんしなかった場合の)ベアファンドの残高との比較になるのでは。

  5. しかし、スポーツ新聞の代表批判は凄いな♪

    そもそも、勝てると思っていた事が恐ろしい。
    サッカーに少しでも詳しければ、勝つことが容易でないことはわかるはずだ。

    ブラジルがホームで格下日本に負けるなんて絶対に許されない。

    WBCで日本がホームで中国に負けるようなもんなのに。

    期待値が高すぎるぞ。

    試合前に、マスコミや評論家が勝つのは難しい、引き分けで充分とか言えない雰囲気がまずいな。

    最近の右系化もそうだけど。

    中田ヒデとか、一部識者の中には代表は攻めなければいけない、自分達のパスサッカーをしなければ駄目だ!みたいな論調が戦前の日本軍みたいに感じてしまうんだな。

    優勝狙うのは大いに結構、だけど先ず予選を突破しないといけない、そして予選は3試合しかない。初戦で負けると予選突破は大変苦しい。

    オイラの記憶で予選の初戦、敗退して突破したのって94年のブルガリアぐらいしか思いつかないよ。

    サッカーは点が入らないスポーツ、失点しないことが重要。引き分けって大切なんだけどな。
    であれば簡単に負けたり失点するクセを修正しないとな。そんなの当たり前じゃね~か!っておっしゃる通りで。

    代表ファンはバルセロナのように華麗にパスを繋ぎ、勝つ試合を望んでるのかも知れないけど、強豪相手にそれは酷だ。
    日本も成長してるけど他国も成長してるんだからさ。

    アルゼンチンとイングランドなんか、ここ何十年ベスト4にもいってないんじゃないか。

    選出達は「だったらお前がやってみろ!」って言いたくならないのかね。

    オイラだったら言うけどな♪
    分かってますオイラが代表になることはないから。

    サッカーも株価と一緒だよ、右肩上がりが続く分けない。良いときもあり、悪いときもある。

    そう人生と一緒!お前が言うなって?確かに。

    散々経験してきたよな、天国と地獄をさ。

    今でも覚えてるのは、ジーコジャパン敗退後に
    評論家が集まって、これからの日本代表は未来がないっていってたんだから、金子、セルジオ、村上龍とか。

    それが、いつの間にか海外で成功すような選手が出てきてるんだから。

    結局、目の前の事しかみてないんだよ。根っこの部分ではニョキニョキ選手が育ってるのに。

    オイラの年代で東京23区内に、今こんなにサッカーチームがあるなんて信じられないよ。
    少年野球しかなかったんだからさ。物凄い変化してるんだよ。

    兎に角、岡ちゃんの時を思い出すな。でも、こうやって一喜一憂するのが楽しい。

  6. >太郎さん
    太郎さんは、「自分でイノベーションを起こして世界を変える、または驚かしたい」
    との思いで起業されたかと思いますが、差しさわりのない範囲で企業理念など教えていただければ幸いです。
    庶民からしたら、マッキンゼーを辞めてまでしたいことがなんなのか興味あります。

  7. >>さんじゅさん
    “俺たち”の住宅ローン政策を逆手にとって、「それ、債券shortと比べてどっちが有利なの?」と
    問いかけるあたり、本稿とも関連する面白い提案と思いましたので、コメントさせていただきます。

    (1)住宅ローン控除(課税所得、ローンを借りた時期による)
    (2)住宅ローン金利のリスクプレミアム分
     大企業正社員(長期プライム+αで借りられる)であり、
     金利分のうち何割かを住宅ローン減税で補えるのであれば、ローンは借りたままにしておき、
     長期債が暴落したら長期債を安値で買い叩いて利益確定、のほうが有利ということになります。
     御国の政策が絡むところには「フリーランチ」の可能性を探るべきですよね。

    (3)債券ベアの追従性(債券先物をShortする場合と完全に同じ値動きをしているか)
     橘さん、ここ見ていたら、この点を調べて記事にしてください。
     ファンドの手数料問題等について問題提起しておられた橘さんでしたら、
     既に確認されているかと思いますが。
     特に、レバレッジ2倍とか5倍とか、倍率固定を謳っているものがありますが、
     先物だったら、価格が上がればレバレッジは相対的に下がり、下がれば逆なのに
     倍率を無理やり固定しようとすれば、乱高下相場で損する恐れがあると思いますが。

    これらの要素を定量的に評価されることをお勧めします。

  8. >日本人は“俺”ではなく“俺たち”を自慢しがちです。
    >これが「自分はたいしたことないけど会社は一流だ」とか、
    >「俺はリア充じゃないけどニホンは世界から尊敬されている」という意識に
    >つながっているとしたら、心当たりのあるひとも多いのではないでしょうか?

    全くご指摘の通り。問題なのは、話し手が単なる雑談で自慢するつもりがなくても、聞き手が自慢されたと解釈し、話がややこしくなってしまいがちになることです。
    大抵の人は親から、「人は人、自分は自分」と育てられていると思うのですが、「俺たち」は際限がないアイディンティティを持っている人が多いです。

  9. 橘さんが散々書いていらしたように、遺伝子レベルでは日本人のみが特異であるとは
    いえません。今回のテーマの、日本人のポジティブ・イリュージョンが特異性を示す
    のは、後天的文化的なものが原因と思います。同じモンゴロイド系の人達のデータが、
    大いにポジティブな事がそれを物語ります。

    私の経験から想像すると、どの日本人も積極性は他に負けず劣らずあります。が、それ
    を表明する事を、さらに積極的に控えるのです、極端なほどに。

    昔、利発な小僧さんがいた。ムラの寺が巨大な鐘を鋳造したが、重すぎて鐘楼に吊れない。
    困った大人達を横目に見ていた例の小僧さんが進み出て、「おめら大人なのに、こんな事
    も解決できねのか?高い所まで鐘を引き摺って行っで、そごで鐘の上に鐘楼を建てる。で、
    次に鐘の下の土を掘り出せば、鐘が吊れるだべや」「おめら大人は、阿呆だっぺか?」

    言われた通りにやってみると、果たして上手く鐘は吊られた。小僧さんは他件にも頭の良
    さを示していたが、ある日に姿を消した。ムラの庄屋筋に殺されたのだという。そのムラ
    だけが目立って発展したりすると、他のムラとの釣り合いが取れなくなり、お上から目を
    付けられ、さらなる年貢などムラ全体の者に迷惑が及ぶことになるというのがその理由と
    いう。(うろ覚えの、江戸期の文書から。信憑性はありません)

    当時の日本人口の8割以上である百姓は、ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと
    ずっとずっとずっとずっとずっとずっと(ずっと=一世代20年として)百姓を続けて来たの
    でした。まわりのムラ人に囲まれて、勝たぬよう負けぬよう皆が皆に合わせてきたのです、
    喰う為に。今でも地方都市などでは溝掃除(私の地方ではデアイという)がある、忘れると
    酒の席で酔って「ハチ」と言われ、現在では笑ってごまかせるが、往時は死活問題のハズ。

    ムラビトが市民になるのは、まだまだ先でしょう。橘さんは経済変化には粘性があると
    書いていましたが、文化習俗のたぐいの粘性はもっと強力で、個人を蝕んでいると思い
    ます。日本人にこそ、リバタリアン思想で解毒を!と思います。

  10. アフリカ系アメリカンのトップが今やアメリカの大統領ですから大したもんです。インチキ医学的な観点でいえば男性でいうイチモツや女性でいう胸の大きさがポジティブさに影響してるかな・・・なんて推移をしてしましたが。とかく日本人は「自分」というものがないような気がします、ブランド物への飛びつきや公務員に就職希望が集中するなどの志向がそうかな。自分に金融リテラシーがあるか分かりませんが、国債ベアは空売りに性質が近い金融商品ですからギャンブル性が高いゆえ見立てやもみ合いを見極められないとヘッジファンドの前に損をさせられまくるでしょう。何よりこれらの商品は不幸が前提に利益が成り立つという認識が必要です。ですから大きな間違いは毎年買うなんてまず現在の政治の動きから見て投資経験が少ないのであれば有り得ません。それに数ヶ月の円安傾向で大げさですが本にあるシナリオ(楽観・悲観・破滅)のどれにあたるか見立てが出来て、かつ何か金融商品を試されましたか?とかく一般市民は来年の消費税率(施行されるかどうかの見立ても大事)に生活が耐えられるかどうかの正念場に備えた方がいいと思います。

  11. ゆうじさん

    「債権short」 って具体的には何をショートするんでしょうか?

    債権の「先物売り」や「プットオプションの買い」みたいなことが個人投資家にはできないから、
    仕方なく「国債ベア」を買っておく(ぐらいしか選択肢がない)と理解しているのですが・・・。

    ご教示いただけないでしょうか?

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