財政破綻に備える「3つのリスク回避術」

『ZAITEN』2011年2月号の特集「20XX年ニッポンの国債暴落」に掲載された「財政破綻に備える「3つのリスク回避術」」を、出版社の許可を得てアップします。

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「日本国は破産するか」については、さまざまな議論がある。たいていのひとは、「こんなに借金(2009年末の国債発行残高は約870兆円)が大きいんだから、いずれ大変なことになるだろう」と不安に思っている。それに対して、「財政危機なんかウソっぱちだ」と威勢のいいことをいうひともいる。

どちらが正しいかを判断するには、まず現状を正確に把握しなくてはならない。

たとえば、「負債の反対側には資産があるのだから、日本国の純債務(負債―資産)はじつはたいしたことない」という議論がある。でもこの話は、資産に年金積立金(総額200兆円)が入っていたりする。

日本国は国民に対して、将来の年金支給を約束している。だからこの積立金は、いっけん資産のように見えても、じつは将来の債務(年金の支払)の一部なのだ。

このような見えない借金(暗黙の債務)を含めると、日本国の実質債務は約2100兆円(対GDP比で約420%)、時価会計したバランスシートでも約1430兆円の債務超過という天文学的な数字になる(小黒一正『2020年、日本が破綻する日』)。霞ヶ関に20兆円の埋蔵金があったとしても、あるいは消費税を数パーセント上げたとしても、そんなものは焼け石に水なのだ。

それでは、日本国の財政はいつ破綻するのだろうか。

大手銀行や証券会社がつぎつぎとつぶれた98年頃は、「2010年があぶない」といわれていた。団塊の世代が定年退職を迎え、本格的な高齢化時代が始まるからだ。ところが案に相違して、現状は景気の低迷や地価・株価の下落はつづいているものの、国債価格は高止まり(金利は低下)したままだ。

いったいどこが間違っていたのだろう。これはすごく簡単な話だ。

サラリーマンが定年退職すれば、かなりの額の退職金が支払われる。将来に対する不安からその大半が貯蓄に回ったとしても、いくばくかの消費刺激効果はあるだろう。その一方で、65歳になったからといって、いきなり医療・介護などの公的サービスを利用しはじめるわけではない。そう考えれば、いまはまだ「退職金バブル」によって景気が下支えされているのだ(それでもこんなに景気が悪い)。

未来を知ることは誰にもできないが、人口動態はその数少ない例外だ。10年後の2020年には人口の4人に1人が確実に高齢者となり、団塊の世代の大半が確実に75歳を超える。彼らが本格的に医療・介護サービスを使うようになれば、現在の社会保障制度は確実に破綻する。しかもこれは一過性の危機ではなく、2050年には国民の2.5人に1人が65歳以上という人類史上例のない超高齢化社会が確実に到来するのだ。

人口動態を見れば、日本の社会保障制度は間違いなく破綻する。それは、避けようのない運命みたいなものだ。

私たちにできるのは、来るべき災厄に備え、個人の被害を最小限に抑えることだけだ。